以前勤務していた競合他社の営業秘密を不正に持ち出したとして、警視庁生活経済課は28日、大手総合商社「双日」(東京都千代田区)の元社員、真鍋昌奨容疑者(32)=東京都江東区豊洲3=を不正競争防止法違反(管理侵害行為)容疑で逮捕したと発表した。容疑を否認しているという。生活経済課は営業秘密を転職先で悪用したり、他人に漏らしたりしていなかったかも調べる。
逮捕容疑は2022年7月16日夜、自宅のパソコンから、以前勤務していた大手総合商社「兼松」(千代田区)のサーバーに元同僚のIDとパスワードを使ってログインし、取引台帳や自動車の新製品開発に関する提案書、採算表といった営業秘密をダウンロードして持ち出したとしている。
生活経済課によると、真鍋容疑者は14年4月に兼松に入社し、自動車部品の取引部門に所属していた。22年6月に退職し、翌7月に双日に転職。双日でも自動車関連を担当していた。
兼松を退職後、同僚だった派遣社員の40代女性に「出張先の飲食店リストがほしい」などと言ってIDとパスワードを聞き出し、それらを使って兼松のサーバーにアクセスしていた。
また、退職直前に約3万7000のファイルをダウンロードしていたことも確認されたという。生活経済課は、いずれも転職先で転用する目的だった可能性があるとみている。
兼松から相談を受け、警視庁は今年4月に双日本社や真鍋容疑者の自宅を家宅捜索し、真鍋容疑者は翌5月に双日を退職している。
元社員の逮捕を受け、双日は28日、ホームページにコメントを発表した。双日はコメントで、中途採用時には前職で知り得た機密情報を持ち込まないことを明記した誓約書を提出させていると説明。その上で「調査の結果、情報の持ち出しを指示した事実、情報を事業に不正に用いたとの事実など組織的関与は把握していない」としている。【加藤昌平】