<独自>奈良のシカ「愛護会が虐待」と獣医師が通報 市が調査へ、同会は「ストレス」と否定

奈良公園(奈良市)や周辺の山間部に生息する国の天然記念物「奈良のシカ」の保護活動に取り組む「奈良の鹿愛護会」の施設内で、保護したシカに十分な餌を与えないなどの虐待行為が行われているとして、同会の獣医師が奈良市に通報書を提出したことが1日、分かった。同会は「虐待にあたらない」と反論しており、市が近く現地調査に乗り出す。
同会の保護施設「鹿苑(ろくえん)」(同市)では、農作物に被害をもたらしたり、奈良公園から大きく離れたりしているシカ約250頭を、一般公開しない「特別柵」と呼ばれるエリアに収容している。
通報書では、特別柵の雄ジカは健康な状態で捕獲されたにもかかわらず、その後脱毛症状がみられ、約7割が飢餓状態に陥っており、毎年このうちの約3分の1にあたる50頭以上が死んでいると指摘。今年4~7月に特別柵内で、死んだ雄ジカの推定年齢の平均は5歳で体重は平均約34キロ、通常の奈良のシカの雄(体重60~70キロ、寿命は約15歳)から大きく下回ったという。
獣医師は、柵内では安価で栄養価が低い餌が与えられているほか、暑さをしのぐ日陰が少なかったり、水飲み場が汚れていたりとシカにストレスを与えやすい環境であり、シカが死ぬ原因となっていると分析。「こうした飼育環境は少なくとも5年以上は続いており、餌の質と量や設備が改善されておらず、動物虐待にあたる」と話す。
一方、同会は産経新聞の取材に、「餌の予算は十分にとっていて不足しておらず、虐待行為にあたることはない」と説明。保護されたシカのうち、山から下りてきた野生度の高い雄ジカが柵内での生活になじめずストレスになっている可能性があるとした上で、「体調不良が見受けられるシカには別の柵に移動させて治療を行っている」と主張した。
通報書を受け、市保健所は10月3日に専門の獣医師らと現地調査を行う。虐待が認められた場合は、奈良地検に刑事告発する方針。

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