「人権侵犯」認定された自民党・杉田水脈がまた出世…「環境部会長代理」に推したのは誰なのか?

びっくりした。このニュースを見たからだ。
『杉田水脈氏が自民党環境部会長代理に起用 アイヌ民族投稿めぐる「人権侵犯」認定も』(日刊スポーツ9月29日)
自民党は総務会で杉田水脈衆院議員を党環境部会長代理にすることを決めた。何度読んでもそう書いてある。
杉田議員は2016年、国連の会議に参加したときのことについて、ブログやSNSに「チマチョゴリやアイヌの民族衣装のコスプレおばさんまで登場」「同じ空気を吸っているだけでも気分が悪くなる」などと投稿。先日これらに対して札幌法務局から「人権侵犯」と認定されたばかりだった。国会議員が、だ。
しかし今回、党環境部会の会長代理に起用された。部会長に次ぐ立場で、党の環境政策の議論に影響力を持つことになるという。
なんで人権侵犯認定されたばかりの人が出世しているのだろう?
一体誰が推したのか?
このニュースが報じられる前は、自民党は杉田水脈氏を次の選挙で公認するのか? という点が注目されていた。自民党内でも次期衆院選で公認候補とすることが問題視されていたという。しかし茂木敏充幹事長は言及を避けていた。すると杉田氏は環境部会長代理となった。森山裕総務会長は「適材適所で進めていると思う」と述べている。杉田氏は「資質」を認められたことになる。おそらく次の選挙でも自民党に公認されるのかもしれない。
思い起こすと杉田氏は昨年も総務政務官に抜てきされた。当然ながら過去の差別発言が問われ、岸田文雄首相が年末のどさくさ時に更迭した。しかし今回また……。一体誰が杉田氏を推したのか? 次の記事に答えが書いてあった。
《杉田氏が所属する安倍派幹部の萩生田光一政調会長が選んだ。》(朝日新聞9月30日)
安倍派幹部の萩生田氏が推したとある。
なぜか「出世」できる不思議
それにしても杉田氏は差別をしながらなぜ何度も「出世」できるのか? 杉田氏の経歴をおさらいしよう。8月に出版された『宗教右派とフェミニズム』(ポリタスTV編、山口智美/斉藤正美、青弓社)に経緯が詳しいので要約して抜粋する。
・杉田氏は複数政党を渡り歩きながら右派に支持される政治活動をおこなってきたが、特に「慰安婦」問題の否定が活動の中心になってきた。
・2012年12月に杉田氏は衆議院選で日本維新の会から初当選すると、翌年に維新の議員とともにアメリカのグレンデール市を訪問し、「平和の少女像」の撤去を要求。国会でも少女像について質問し、右派のあいだで注目を浴びた。
・2014年に次世代の党から出馬すると落選。浪人中は「慰安婦」問題をめぐる右派の「歴史戦」活動に積極的に関わった。
・「歴史戦」とは産経新聞が2014年に始めた連載企画のタイトルがもとになり、広く右派の間で使われるようになった言葉。中国や韓国、及び「朝日新聞」をはじめとする日本の左派が日本を貶めるために、「慰安婦」問題や徴用工問題、南京事件など歴史認識問題に関して不当に攻撃を仕掛けていて、それに対抗するために戦わなければならないとする。それを「歴史戦」と称した。
・杉田氏は精力的に「歴史戦」活動を行い、2017年10月に自民党の公認候補として衆院選比例ブロックに出馬し、当選。
こうして今に至るのである。注目すべきは複数の政党を渡り歩きながら2017年に自民党の目に留まり、しかも比例中国ブロックの単独1位で立候補という「厚遇」を手に入れたことだ。
この時のプロセスについて2018年の毎日新聞(8月2日)が書いている。
《実はこの経緯について、ジャーナリストの桜井よしこ氏が昨年9月、ネット上の番組の対談で「安倍さんが『杉田さんはすばらしい』と言うので萩生田さん(光一党幹事長代行)が一生懸命にお誘いした」と語った。》
なるほどそういう状況があったのか。安倍氏、桜井氏、そして萩生田氏の名前も出てくる。
ちなみにこの記事が書かれた当時は、杉田氏が『新潮45』への寄稿で性的少数者(LGBTなど)を「生産性がない」と否定した問題の渦中であり、毎日新聞は杉田氏の経歴を検証していたのだ。
「首相の思いを代弁すれば…」
同時期の2018年7月28日の東京新聞には、杉田氏のような議員は「安倍首相におもねり、首相の思いを代弁すれば報奨があると期待している」「出世を目指す政治家たちにとり、差別発言を自制する理由はない」という識者の見立てが載っていた。
そして昨年7月。安倍氏銃撃事件をきっかけに旧統一教会問題がクローズアップされた。
《しかし、統一教会が2000年代はじめに特に盛んになった、フェミニズムや男女共同参画への反動(バックラッシュ)の動きの中の中心的な団体だったことに触れるメディアはほぼ皆無だった。》(『宗教右派とフェミニズム』)
世の中がバックラッシュに鈍いのをいいことに、杉田氏のような政治家が過激な言説、いや、差別発言すらまき散らして出世していく様子が見えてくる。ある一定の人にウケようという杉田氏の動きがわかる。
時代に逆行する自民党
やはり問われるのは今後の自民党の対応だ。思い起こしたいのはジャニーズ事務所との契約を見直す企業が相次いでいることだ。
ジャニー喜多川氏の性加害問題を受け、各企業は人権侵害に寛容と思われたらアウトなのでCMやスポンサーから撤退している。
それに比べるとどうだろう。自民党は「人権侵犯」と認められた差別発言の宝庫・杉田氏をむしろ重用している。政党と企業は違うとはいえ逆行している。この差はなんだろう。
でも「客」を逃したくないという意味では自民党も企業と同じかもしれない。杉田氏を重用して右派コア層に目配せしているのではないか。安倍氏亡き今、安倍派の萩生田氏が杉田氏を推している理由も見えてくる。
しかし杉田氏を重用することは、自民党は人権侵害や差別に寛容だと宣言しているようにしか見えない。岸田首相は自民党総裁として同意なのだろうか。だとしたらこれをマニフェストに入れて解散総選挙をしてみては?
(プチ鹿島)

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