高島直樹は小池百合子と創価学会に振り回されて逝った【佐高信「追悼譜」】

【佐高信「追悼譜」】
高島直樹 (2023年10月2日没、享年73)
◇ ◇ ◇
小池百合子と公明党(創価学会)に振りまわされた男が亡くなった。「都議会のドン」と呼ばれた自民党の内田茂を支えて東京都連幹事長を務めた高島である。享年73。
公明党幹事長の石井啓一が今春、「(東京都での自民党との)信頼関係は地に落ちた」と発言して話題になったが、そもそも両党の間に「信頼関係」はあったのか? これまでもさまざまにぶつかってきたのは、そこに利害関係しかなかったということだろう。
2016年6月に都知事だった舛添要一が辞任したが、当時、内田は「リオ・オリンピックが終わる9月まで続けたいという知事の思いを遂げさせようと思ったが、都議会公明党の合意が得られなかった」と語った。この時、高島も内田の意を受けて奔走したのである。
その後、小池は自民党が立てた増田寛也に対抗して都知事選に立候補し、都知事になる。
小池は巧みに動いて公明党を籠絡し、創価学会婦人部の信頼を得た。高島を含む自民党は小池に何度も煮え湯を飲まされてきたのである。例によって空っとぼけて、小池は高島の死にこんなコメントを発表した。
「長きにわたり、都政に対してリーダーシップを発揮し、牽引されてきた。その間(オリンピック)組織委理事として東京2020大会開催に向けて多大なるご尽力をいただいた」
くっついたり離れたりする自民党と公明党の今回の「決裂」は、公明党の東京28区への候補者擁立を自民党東京都連が拒否したことに端を発している。反対の急先鋒が都連会長の萩生田光一と幹事長の高島だった。
『宗教問題』2023年秋季号で、全国紙政治部記者が語っている。
「高島さんは、都議会で小池百合子都知事や都民ファーストと組んだ公明党を、目の敵にしている。その公明党の岡本三成衆議院議員(東京12区選出)が、次の衆院選で自分の地盤でもある足立区(東京29区)への転出を発表した。高島さんに根回しなく公明党がそういうことをやったというので、公明憎しの感情がより高まり、茂木敏充幹事長に直談判したほどだった」
こういう背景を考えれば、小池の追悼コメントは、高島にとって受け入れられないものだろう。そこに厚顔な小池の実像が浮かび上がる。関東大震災時の朝鮮人虐殺には追悼のメッセージを送らず、もらって喜ばないだろう高島にはそれを送るのである。高島の死が「決裂」にどう影響するのかはわからない。しかし、高島は無念の思いを抱いて逝ったに違いない。
前掲の『宗教問題』で、同誌編集委員の中山雄二が自公の今後をこう予測している。
「自民党東京都連のトップ(萩生田)とナンバー2(高島)が、自らの事情で公明党候補の出馬を阻んだ。それが自公連立に亀裂を与えた。事態はどうにか収束するようだが、現場関係者の間にはわだかまりは強く残ったようだ」(文中敬称略)
(佐高信/評論家)

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