[社説]内閣支持率最低 「無風政治」を打破せよ

共同通信社が14、15両日に実施した全国電話世論調査で、岸田内閣の支持率は過去最低の32.3%まで落ち込んだ。
全国紙3紙(朝日・毎日・読売)やNHKの世論調査も同様の傾向を示している。朝日と毎日の調査では不支持率が60%を超えた。
9月の内閣改造が政権浮揚につながっていないだけでなく、岸田文雄首相が旗を振る経済対策についても、極めて厳しい評価が示された。
政府は今月中に経済対策を取りまとめる予定だが、共同の調査では「期待しない」との声が若年層、中年層とも60%を超える。
「具体性がなく場当たり的」との批判は自民党の中からも上がっている。
岸田首相は何がしたいのだろうか。「安倍政治」の呪縛から抜け出せず、政策面でも人事面でも迷走が目立つ。
防衛費の大幅増額で増税方針が打ち出されたかと思うと、解散風が吹き始めた途端、今度は与党から減税の大合唱が起こった。
内閣改造では、女性ゼロの副大臣、政務官人事が批判を浴びた。首相が語る言葉は官僚言葉が多く、国民に届いていない。
細田博之衆院議長の辞任表明の記者会見も、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との接点について曖昧な説明に終始し、疑念を膨らませた。
だが、支持率が低迷し続けているにもかかわらず、日本の政治には緊張感が乏しく、無風状態のまま。誰も次の選挙で政権交代が起こるとは思っていないからだ。
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高度成長期の日本は「経済一流、政治三流」といわれた。しかし今や1人当たりGDPは先進7カ国(G7)の最下位に転落している。
G7各国の平均賃金は上昇しているのに、日本はほぼ横ばい。非正規雇用の増加で国内の経済格差も広がった。
有権者が重視する政策は「物価・経済対策」である。その政策に期待が持てないという人が多いにもかかわらず、政権交代の風はどこからも吹いてこない。
解散権は政権維持のための道具として使われ、与党の都合のいいように「解散の大義」が語られる。
小選挙区制の下で野党が政権交代を実現するためには候補者の一本化が必要だが、野党共闘は完全に行き詰まってしまった。
日本の政治が無風状態なのは、岸田政権の支持率が低迷しても、野党がばらばらで、政治の展望を示しきれないからである。
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政権交代がなければ政治に競争原理が働かず、政治は活力を失い、よどんでくる。
政治におごりが生じ、それをチェックする機能さえ失われれば、民主主義そのものが空洞化せざるを得ない。
補正予算案を審議する臨時国会は20日、召集される。
議論すべき課題は山積している。岸田首相は、支持率に表れた国民の声を正面から受け止め、掲げた政策をきちんと説明すべきである。
本格的な国会論戦を通して「無風政治」を打破することを政府と与野党に求めたい。

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