人気ゲーム「ドラゴンクエスト5」を基にした小説の著者が主人公の名前を映画で無断使用されたとして、制作したスクウェア・エニックス(東京)や東宝(同)などに220万円の損害賠償と謝罪広告の掲載を求めた訴訟の判決が20日、東京地裁であった。柴田義明裁判長は「人物の名称は著作物ではない」として請求を棄却した。
原告は長野県軽井沢町の小説家久美沙織さん。
判決によると、久美さんは2000年、スクエニの前身企業と出版契約を結びドラクエ5を基にした小説を出版。ゲームでは主人公名を自由に設定できるが、小説では「リュケイロム・エル・ケル・グランバニア」と名付け、通称を「リュカ」とした。グランバニアはゲーム内の王国名で、他は久美さんが創作した。
スクエニなどが19年に公開した、ドラクエ5を原案とする映画「ドラゴンクエスト ユア・ストーリー」で、主人公名は「リュカ・エル・ケル・グランバニア」だった。
柴田裁判長は「人物の名称は、思想または感情を創作的に表現し、文芸や美術などに属するとは言えない」と述べ、著作物ではないと判断。原告は契約上、協議する義務がスクエニにあったと主張したが、認めなかった。
判決後、久美さんは取材に「できれば勝ちたかった。諦めずに訴え続けたい」と話し、控訴する意向を示した。
[時事通信社]