「ジャニーさんに15回されました」カウアン・オカモト氏(26)が受けたジャニー氏最晩年のおぞましい性加害《ジュリー氏退任で新社長へ》

〈 「ジャニーさんがお尻にローションを塗って…」紅白出場アイドルの元忍者・志賀泰伸氏が明かしたジャニー喜多川氏のおぞましい性加害行為《ジュリー氏退任で新社長へ》 〉から続く
ジャニーズ事務所の創業者・ジャニー喜多川氏(2019年死去、享年87)の性加害問題を巡り、8月29日、事務所が設置した「再発防止特別チーム」が記者会見を開いた。約3カ月に及ぶ調査の結果、ジャニー氏による性加害があったことを認定。被害者への救済策を打ち出すこと、ガバナンス強化のため藤島ジュリー景子社長(57)の辞任などを提言した。
ジャニー氏の性加害問題については、とりわけ日本では「 週刊文春 」が率先して報じてきた。世間の流れを変えるきっかけとなった記事を期間限定で特別に無料公開する。(初出:週刊文春 2023年4月13日号 年齢・肩書きは掲載当時のまま)
◆◆◆
過去4週にわたり、計6人から、ジャニー氏による性加害の証言を聞いてきた小誌。そしてついに実名・顔出しで告発する元ジュニアが現れた。カウアン・オカモト氏。今は個人で活動している彼が被害を受けたのは15歳の時だった。
サッサッサッサッ。
少年たちが寝静まった深夜、廊下にスリッパの足音が響く。足音が自分の寝る部屋の前で止むと、少年の胸は張り裂けそうになった。
「まさか今日? と」
こう振り返るのは、2012年から16年までジャニーズJr.として活動したカウアン・オカモト氏(26)だ。
ジュニア時代は、『Myojo』(集英社)の表紙を飾ったこともある。ドラマ『GTO』(14年、フジ系)や、トーク番組『Rの法則』(NHKEテレ)にレギュラー出演するなど、200人近いジュニアの中でも、特に活躍した1人だった。
小誌は過去4週にわたり、ジャニーズ事務所創業者の故・ジャニー喜多川氏によるジャニーズJr.への性加害問題を報じてきた。19年に87歳で亡くなったジャニー氏。カウアン氏の証言は、最晩年まで性加害が続いていたことを物語る。
彼は今回、実名で小誌の取材に応じ、自身が撮影したというジャニー氏や、ジャニー氏の自宅の動画なども見せてくれた。
「ユー、これから来れる?」
愛知県豊橋市で生まれ育ったカウアン氏の両親は、ともに日系ブラジル人。
「家ではポルトガル語、外では日本語という環境。両親は日本語ができないので、保育園の年中の頃には僕が2人の通訳をしていました」
ブラジルとは文化が違うため、親の教えと学校で教えられることが真逆で、戸惑うことも多かったという。
「例えば周囲にはフレンドリーに接しなさいと教えられていたのに、上下関係のある日本では生意気だと思われたり。イジメのようなことも経験しました。そんな中で、助けてくれたのが音楽だったんです」
彼の心を掴んだのは、2歳上の世界的スーパースター、ジャスティン・ビーバーだった。貧しい家庭環境からスターに駆け上がったジャスティンを、自らと重ね合わせたのだ。
そして名古屋のモデル事務所に登録。マネージャー同士が知り合いだった縁で、ジャニーズ所属だった岡本健一に、ジャスティンの「Baby」を歌う自分の姿を収めたDVDと、音楽をやりたい思いを綴った手紙を送った。
すると12年2月12日、寝坊した日曜日の朝に携帯電話が鳴った。
「僕だよ、ジャニーだよ」
最初は半信半疑だったが、
「手紙読んだよ。ユー、おもしろいね」
という言葉で疑いの気持ちは消えた。
「ユー、これから来れる?」
東京国際フォーラムで始まるSexyZoneのコンサートに来いというのだった。慌てて新幹線に飛び乗ったカウアン氏。ジャニー氏の電話の5時間後、5000人の観客の前で「Baby」をアカペラで歌っていた。
「歌ってる時のことは夢中で覚えていないんですけど、舞台袖にはけると、バックで踊る100人近いジュニアが拍手で出迎えてくれたのをよく覚えています。『オレのサクセスストーリーが始まった』という気持ちでした」
そのままジャニー氏の運転で青山のレストランに行き、他のジュニアと共にご飯を食べた。食後は彼らと一緒に、すぐそばのジャニー氏の渋谷の自宅マンションに泊まることになった。
タワーマンションの最上階、2つの部屋を1つに繋げたジャニー氏の自宅は、450平米を超える大豪邸だ。円柱に埋め込まれた水槽、ジャグジー、カラオケルーム、ゲーム機が置かれたシアタールーム。少年たちには夢のような場所だった。いつでも泊まれるように、浴衣と真っ白なブリーフも用意されていた。
ベッドルームは複数あった。中でもジャニー氏の寝室にはテーブルと、少年たちの履歴書がギッシリ詰まった紙袋、そしてベッドが2台置かれていた。
「ジャニーズに入るまで、ジャニーさんのそういう話は全く知りませんでした。その日はジャニーさんの部屋から離れた別の寝室で寝ました。たまにジャニーさんが見に来ましたけど、僕はずっとお母さんとポルトガル語で電話をしていました。そのせいか、ジャニーさんは先に寝ていましたね」
ジャニー氏に気に入られたカウアン氏は、同時期に入った名古屋出身の平野紫耀らと名古屋ジャニーズJr.として関西ジャニーズJr.の公演にも出演した。
寝ている部屋の前で、スリッパの足音が止まり…
12年3月、中学卒業を控えた頃だった。東京での仕事を終え、他のジュニアたちとジャニー氏の自宅に泊まることになった。
リビングで出前の夕食を食べると、ジャニー氏が近づいてきて、肩をマッサージしながら言った。
「カウアン、早く寝なよ」
カウアン氏が振り返る。
「他のジュニアも、『今日はカウアンか』と、それで気づいたと思います。その日はジャニーさんの部屋から近い部屋で寝ました。『寝なよ』って言われたときは、ジャニーさんの寝室か近くの部屋に寝ないと、翌日すごく機嫌が悪くなるんです。その頃には他のジュニアにも聞かされていたし、自分でも調べたりしていたのでわかっていました。でも、その部屋には3つベッドがあって、他の奴もそこで寝ていたんですが……」
ジャニー氏は深夜、家の中を回る。電気を消したり、ジュニアたちに布団をかけたり、遅くまで騒いでいないか、見回りをするのだ。
サッサッサッサッ。
スリッパの足音が彼の寝る部屋の前で止まり、ジャニー氏が入ってきた。見回りでカーテンを閉める際、窓の明かりで少年たちの顔は既に見分けている。
「下のほうからベッドに入ってきて、布団を引き剥がされて、僕の腰のあたりで横になるんです。それ以上上がってくることはなくて、足元で全て終わります」
行為は足のマッサージから始まる。浴衣はすぐにはだけさせられ、手が直接身体に触れる。しばらくすると、手は上に伸びてきた。
「マジだ、と。最初はマッサージだけかなとも思いました。でもパンツの上から触られて、脱がされちゃって……。パンツ脱がされるともう覚悟しますね。手で触られて、それから口でされました」
カウアン氏は必死で眠っているふりをした。
「足を動かされても戻さないで、いかにも寝てます、っていうのを演じる。気づいていないフリをしたほうが楽っていう。気づいているのに拒否しないと、許可しているみたいで、そう思われたくない。許可してない、知らない、されたっけ? みたいな」
真っ暗な部屋で、当時80歳のジャニー氏は無言のまま行為を続けた。
「(歯が当たって)めっちゃ痛いです。僕、イケなくて、途中でジャニーさんに寝られました。しばらくしたらまた動き始めました。どうしようと思って、携帯でAVを観ました。イヤホンつけて。4時間くらいベッドにいたんじゃないかな。実際されているのは1時間くらいだと思いますけど」
射精すると、ジャニー氏は飲み込んで、隣の洗面所でイソジンでうがいをし、歯を磨くと出て行った。外はもう白み始めていた。
「小さく折りたたまれた1万円札を渡してきました」
「その時はとりあえず終わって良かった。でも、何考えてるんだろうって……」
その後、ジャニー氏とは、何事もなかったかのように「おはよう」と挨拶を交わした。
「あくまで僕は寝ていたテイなんで。『ユー、仕事どこ? じゃあ、一緒に出ようか』と言われて、2人でエレベーターで降りるときに、小さく折りたたまれた1万円札を渡してきました。“お金もらえるんだ”と。何かあったときに自分を守れるように、ジャニーさんにされたときの動画を後で撮って残してあります」
その後は順調に仕事が続いた。そして同時にジャニー氏による行為も続いた。
「すでに推されていたので、それが継続したという感じ。『仕事入れといたよ』的なアピールはありました。マンションの鍵をもらったのもそうだし。されないと、鍵をもらえないと思います」
彼がジャニーズにいた4年間で、行為は「計15~20回はあった」という。
「ジャニーさんには感謝しています」
「1週間くらい泊まったときは、2日連続でされたことも。大阪の帝国ホテルにジャニーさんと当時ジュニアの子と3人で泊まったときには、2人で寝ているキングベッドに入ってきて、されたこともありました」
カウアン氏がジャニーズ事務所を離れたのは16年。もともと海外志向の強かったカウアン氏は、当時ジャニーズが認めていなかったユーチューブでの活動を、ジャニー氏に直訴していた。
「『やるといいよ、僕が会社にプレゼンする』とジャニーさんは前向きでしたが、その後、『ダメだったよ』と。スタッフに『キンキ(キッズ)もやってないのに、できるわけないだろ』と言われました。それで辞めたんです」
今は自分で作詞、作曲、プロデュースまでしているカウアン氏。日本とブラジルの両方で活動、ラテン・グラミー賞を目標にしているという。彼は、ジャニー氏のことをどう思っているのか。
「ジャニーさんには凄く感謝しています。僕の人生が変わったから。その部分(性加害)は悪で、許されることではないかもしれないけど、人間はみんな完璧じゃないから。親にされたっていう言い方が一番伝わるのかな。そういうことをされたけど、育ててくれたこともチャラになるの? と。全部否定するのは自分が腐っちゃう。そこから生まれてきてるから。僕自身を否定することになってしまう」
カウアン氏もこれまで小誌に証言した元ジュニア同様、被害者意識は薄い。90年代後半、13歳で被害を受けた男性は、先輩たちも皆がされているから、「嫌だとは思わなかった」と証言した。ただ、青少年健全育成条例に抵触する可能性のある行為なのは論をまたない。
ジャニーズにカウアン氏が受けた被害を把握しているか訊ねたが、締め切りまでに回答はなかった。
今回、カウアン氏はなぜ小誌に実名で語ってくれたのか。
「言えなかったときのほうがキツかった。言えないということは、人生で起きたことを否定しているということ。言えたから、もういいやとも思える。それは今後、生きていく上で大きい。隠し事はしたくない。今はハッキリ嫌だったと言えるし、感謝してる、とも言える。喋ることで自分の気持ちも浄化されました」
ジャニー氏への愛憎相半ばする思いを抱えて、彼は今も生きている。
〈 《ジャニーズ性加害問題》「6人くらいとした」男性マネージャーもジュニアに性加害していた「ジュリーさんは知らなかった”と言ってたけど…」【ジュリー氏退任で新社長へ】 〉へ続く
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年4月13日号)

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