農業用の“ビニールハウス”の上にたまった水に、窓際に置いたペットボトル…
身近にある『水』が原因となり、火事につながる恐れがあることはご存知でしょうか?夏だけではなく一年を通して起こりうる火事ということで、消防が注意を呼び掛けています。
2020年7月、新潟県十日町市では消防にこんな相談がありました。
「ビニールハウスの中のシートやゴザに、1か月前からたびたび燃えた跡がある」
思い当たる節がないのに、ハウスに置いていたものが燃えている…不審に思った農家の声を受け、消防職員が調査をすると「太陽」と「水」が大きく関わっていたことが分かりました。
火事のしくみはこうです。ビニールハウスの天窓に溜まったままになっていた水によって差し込んだ太陽の光が反射、または屈折。光が一点に集まって熱が蓄積することで光が当たった燃えやすいものが発火し、火事につながったということです。
このように水などが“レンズの役割”をはたして起きる火事を「収れん火災」と呼びます。でも、本当に太陽と水で火が起こるのでしょうか?
新潟県十日町地域消防本部に協力してもらい、実際に検証してみました。
まず、ビニールハウスの天窓部分に水をため、その下にシートを敷きます。この日は太陽の光はさほど強くありませんでしたが、それでも水によって屈折した光は一点に集中。
数分ほど待つと、うっすらと白い煙が!見てみると、シートは熱で縮み穴が開いていました。
別の日に行った実験では、勢いよく煙が出て火が上がっているのがわかります。
水の入ったペットボトルを使った実験でも、この通り。光が集まると、1分ほどでシートに穴が開きました。収れん火災の危険は日常生活に潜んでいます。
例えば、机の上に置いた鏡やガラスの花瓶、さらには金魚鉢や水が入ったペットボトルも!どれも家の中などにあるものですが、太陽の光が届くところに置いておくと、これらがレンズの役割を果たしてしまい、火事につながる恐れがあるのです。小学生のとき、虫眼鏡と紙を使い、光を集めて紙を焦がす実験を覚えていますか?これと同じ原理です。
十日町地域消防本部の山崎さんは「身近なところにいろいろなレンズ効果をもたらすものが存在する」と指摘したうえで、注意を呼びかけます。
【十日町地域消防本部 山崎哲嗣 予防課長】「どうしても『収れん』と言うと、日の光が強い夏場のことを連想しがちだが、これは冬の期間においても発生しうる火災。物を置く場所等を考えていただきたい」
十日町地域消防本部によりますと、収れん火災の場合は特定するのが難しく、火事の原因として報告されることは、まれだということです。「実は収れん火災だった」という火事は、実際は起きている可能性があります。
『収れん火災』の研究を行った瀬沼哲司さんによると
・光・レンズ・燃えやすいもの
この3つのうち、どれか1つを無くすだけで、この火事は起こらないということです。
光が届く場所にレンズになるものを置かない、カーテンを閉めるなど、心がけ一つで防げる火事ですから、身近なところに火事のリスクがあるということをぜひ覚えておいてほしいと思います。