【解説】日大アメフト部薬物事件で9人の部員関与?「閉鎖空間は断りづらい」寮で大麻蔓延の理由を薬物依存の専門家に聞いた

日本大学のアメフト部員が違法薬物を所持していた疑いで逮捕された事件。 逮捕された男子部員の他にも、現時点で9人の現役部員について、日大側が警視庁から任意聴取などの依頼を受け、違法薬物に関与した可能性がないか調べていることが13日、関係者への取材でわかった。また東京農業大学ボクシング部でも、大麻所持で4人の逮捕者が出ている。
若者への“大麻蔓延”は深刻だ。警察庁の「令和4年における組織犯罪の情勢」によると、2022年に全国で大麻を持っていたとして逮捕された5342人のうち、20代以下の若者は7割超の3765人に上っている。
なぜ若者に大麻が蔓延しているのか?また部活動や寮という“閉鎖空間”でなぜ蔓延したのか?

薬物依存に詳しい湘南医療大学薬学部の舩田正彦(ふなだ・まさひこ)教授に話を聞いた。
若者に「大麻はそれほど大したことない」という情報が蔓延か
――なぜ、大麻が若者に蔓延しているのか? 非常に難しい問題ですが、大麻に対する危険性の認識が低く見積もられていることや、SNSなどを通じて入手しやすくなったことが大きな要因と考えます。 海外では合法化されている国や地域があることも影響していて、「大麻はそれほど大したことない」という情報も蔓延しているようです。 また国内に相当量流通している大麻がSNSや秘匿性の高いアプリなどを通じて、購入しやすくなった現状もあります。 この他には、周囲の人に誘われて始めてしまったということもあり、実際に検挙された人の多くが「好奇心や興味本位で使い始めてしまった」という話をしています。こうした背景には、社会での生きづらさから、薬物に逃げ場を求めてしまう人がいるという実態があります。
警察庁の統計では、使用したきっかけについて「好奇心・興味本位」と答えた人が59.6%、「その場の雰囲気」「クラブ・音楽イベントの高揚感」「パーティー感覚」と答えた人は24.8%となっていて、実に84%が明確な目的なく安易な気持ちで大麻を始めたことわかる。
大麻は“ゲートウェイドラッグ”
日大アメフト部の大麻所持事件をめぐっては、逮捕・起訴された部員が「大麻は他の部員と一緒に吸った残りカスだった」という趣旨の供述をしていることがわかっている。警視庁はすでに、大麻所持に関与した疑いのある別の部員4人から、任意の事情聴取を行い、捜査を継続している。
――なぜ、大麻が部活内で蔓延するのか?また寮で蔓延するのか? 閉鎖された空間や上下関係がある空間、親しい人がいる空間では、断りづらくなって、蔓延してしまうということも考えられる。 そういった意味では、寮のように集団生活しているところに薬物が入り込むと、抜け出しづらい。またスポーツの能力を買われて集まった集団の中で、成果が残せない時や、思うように行かない時に、違法薬物に逃げ場を求めてしまうメンバーがいたとしたら、そうした背景から蔓延した可能性があるかもしれない。
――若者が大麻を始めてしまうリスクは? 大麻自体には依存性があるが、覚醒剤に比べると依存性は低いと言われています。しかし大麻は、“ゲートウェイドラッグ”と言われていて、覚醒剤などより依存性が高い違法薬物への入り口となってしまいます。また10代で大麻の使用を開始すると、記憶力や認知機能など脳の発達に影響がある他、その後薬物依存に陥るリスクが、5倍~7倍に上がるという海外の研究もあります。
――大麻使用の危険性は? 最近出回っている大麻の質が変わっていて、主成分のデルタ9のテトラヒドロカンナビノール(=THC)の含量が多い、非常に作用の強い大麻も出ています。陶酔感・多幸感が強く出る他、視覚・聴覚の変容が強く現れますが、逆に不安や恐怖、場合によってはパニック状態になることもあるといいます。 また大麻のリスクとしては、先ほども述べたように、若い時に使うと、記憶力・認知機能に影響を及ぼすと言われているのと、若い人が使うと依存するリスクがあるので絶対に使用しないように呼びかけたいです。 また今薬物を使用してしまっている人には、相談窓口もあります。薬物依存の専門の医療機関や、自治体の薬物依存に関する窓口などに相談をして、治療に繋げることが重要です。これは家族でも相談することができます。

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