自民党の二階俊博・元幹事長率いる二階派が党内唯一の「非主流派」として孤立を深めている。内閣改造では、閣僚ポストの減少をいったんは求められ、しこりを残した。二階氏が重視する2025年大阪・関西万博や対中外交で存在感を示したい考えだが、展望は開けていない。
「みんなで力の限り、郷土と我が国のために、明日に向かって前進を続けよう」
二階氏は20日、長野県軽井沢町で開いた派の研修会でこう述べ、結束を呼びかけた。その上で、「我が同志をいじめたらこんな目に遭うぞと、力を示さないとダメだ」とも強調した。
二階氏は安倍、菅両政権で歴代最長となる5年超にわたり幹事長を務めた経験を持つ。派の所属議員はピーク時には48人に増えた。現在は41人に減り、党内6派閥のうち、第5派閥だ。
今回の内閣改造では、結果的に2人が入閣した。当初は、首相側から閣僚数の割り当てを2人から1人に減らすことを打診された。派幹部が「それならゼロでいい」と反発すると、最終的には小泉法相と自見地方創生相の2人が起用された。ただ、自見氏は派が要望した議員ではなく、「女性枠」の一本釣り人事とみられており、派内では「禍根を残した」との声が出ている。
自見氏が万博相兼務となり、二階氏は周囲に「派閥から万博相が出たことはチャンスだ」と語る。二階氏は、党側で万博の推進本部長を務めており、政府と歩調を合わせて成功に導くことで、存在感を高める狙いがあるとみられている。万博の開催準備は遅れ気味で、「二階派に重荷を押しつけられたのでは」(若手)とみる向きもある。
二階氏の中国人脈を生かした訪中計画を巡っては、東京電力福島第一原子力発電所の処理水の海洋放出に中国側が反発し、訪中の調整は難航している。
自民内では、二階派が岸田首相とさらに距離を置けば、首相が再選を目指す来秋の総裁選の懸念材料になるとの見方もある。自民ベテランは、「二階氏が無派閥グループや若手を巻き込んで政局を仕掛けに来る可能性もある」と解説する。