国立がん研究センター東病院(千葉県柏市)の医療機器選定・使用を巡る汚職事件で、収賄容疑で逮捕された医師の橋本裕輔容疑者(47)が、診療科の「医長」に昇任した頃から贈賄側メーカーの製品を使い始めていたことが捜査関係者への取材でわかった。警視庁は、医長への昇任をきっかけに、便宜を図った可能性があるとみている。
警視庁幹部によると、橋本容疑者は同病院肝胆 膵 内科の医長だった2021年5月、医療機器メーカー「ゼオンメディカル」(東京)が製造販売する「ステント」(金網状の筒)を優先的に使用した見返りに、同社から約170万円の賄賂を受け取った疑い。
製品の安全性や有効性を確認する「市販後調査」に協力する契約を19年4月にゼオン社と結び、同社製ステントを1本使用するごとに1万円の謝礼を受け取っていたが、警視庁は市販後調査に実態がなかったとみて、20年度分の約170万円を賄賂と認定した。
捜査関係者によると、橋本容疑者は15年から肝胆膵内科に勤務。19年4月に同内科長の下のポストに当たる「医長」に昇任した頃から、それまで同内科では使用実績がなかったゼオン社製のステントを患者への治療で使い始めた。
同社製ステントのシェア(占有率)は一時、同内科で5割超まで伸長したという。だが、橋本容疑者が21年7月に医長を退任し、同9月に米フロリダ大に拠点を移すと、シェアは1~2割にまで落ちていた。
警視庁は、医療機器を選定・使用する際の医長の影響力などについても確認を進めている。
これまでの捜査で、橋本容疑者が20年度分の約170万円とは別に、19年度分の謝礼として百数十万円を受け取っていたことも判明した。警視庁はこの19年度分についても賄賂性の有無を調べている。