米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画を巡り、斉藤鉄夫国土交通相が軟弱地盤改良に必要な設計変更を4日までに承認するよう指示したことに対し、沖縄県の玉城デニー知事は同日、「期限までに承認することは困難だ」と国交相に回答した。承認に応じなかった形で、国交相は5日にも、知事に代わって承認する「代執行」に向けた訴訟を福岡高裁那覇支部に起こす。
知事は2021年に防衛省からの設計変更申請を不承認処分としたが、処分を巡る国との訴訟の最高裁判決(23年9月)で県敗訴が確定。知事には設計変更を承認する法的義務が生じ、公有水面埋立法(公水法)を所管する国交相が承認を指示していた。
玉城知事は4日、記者団の取材に「知事として承服できないことがある。他方で、行政の長として判決を受け止める必要がある。これらを踏まえて総合的に判断するため、協議を重ねたが、判断に至らなかった」と語った。ただ、事実上、判決に従っていないとの指摘を受ける可能性がある。
政府は18年12月に辺野古にある米軍キャンプ・シュワブ南側の海域で埋め立て工事を始めた。南側約41ヘクタールは「陸地化」されたが、約111ヘクタールある東側の埋め立て予定海域では軟弱地盤が見つかり、埋め立て工事には着手できていない。
防衛省は20年4月、地盤改良工事を実施するため、公水法に基づく設計変更を県に申請。県は「環境破壊が甚大な上に、技術的な確実性がない」などとして21年11月に不承認処分としたが、国交相は22年4月、不承認処分を取り消す裁決をし、さらに裁決後も承認していないとして県に是正を指示した。
県は是正指示などの取り消しを求めて提訴したが、9月4日の最高裁判決は「知事が(国の)裁決に従わないことが許されれば、紛争の迅速な解決が困難になる」として国交相の是正指示を追認し、県の敗訴が確定した。判決を受け、斉藤国交相は承認するよう勧告したが、県は従わなかったため、国交相は28日付で承認を指示していた。
地方自治法では、国が代執行訴訟を起こした場合、高裁は提訴から15日以内に弁論を開くと規定されている。国が勝訴すれば高裁は知事に承認を命じる。それでも知事が拒否した場合、国は承認を代執行して地盤改良工事に着手できる。知事は上告できるが、逆転勝訴までは工事を止めることができない。【比嘉洋、内橋寿明】