新型コロナウイルスの感染症法上の分類が今年5月に「5類」へ移行し、社会が日常を取り戻しつつある中で、後遺症に悩む東京都民からの相談が相次いでいる。分類の移行前までは減少傾向にあったが、移行後に増加に転じ、10歳未満の子供が後遺症を訴えるケースもある。都は「後遺症は若い世代も無縁ではない」とし、気になる症状があれば相談窓口に問い合わせるよう呼び掛けている。
新型コロナ感染の後遺症は実態把握が難しく、都は令和3年3月以降、都立の8病院に「コロナ後遺症相談窓口」を開設。症状に応じて地域の医療機関を紹介するなど、対応にあたってきた。
都によると、令和4年5月から今年8月までに寄せられた相談は計7632件に上る。1人の相談者が複数の症状を訴えることも少なくなく、中でも多いのは「倦怠(けんたい)感」(2704件)や「せき」(2211件)「発熱・微熱」(1170件)だ。「嗅覚障害」(863件)や「味覚障害」(792件)「呼吸困難感」(750件)などに悩まされる人も多い。
相談者の年代も10歳未満から70代以上までさまざまで、40~50代が3割を超す一方、10歳未満~20代も2割に上る。新型コロナ感染時の症状は「中等症以上」が2%程度にとどまり、「軽症以下」が約98%を占める。
後遺症は症状が数カ月以上の長期にわたったり、改善した後にぶり返したりするケースもあるとされ、休職せざるを得なくなる人もいる。後遺症に悩まされる児童・生徒の中には、学校に通えなくなるケースもあるという。
都は後遺症への理解を広げるため、事業者向けにリーフレットを作成。「疲れやすくなった」「仕事でのミスが多くなった」「物忘れが激しくなった」など、従業員の状況から「後遺症かもしれない」と配慮することや、相談を受けた場合には業務を変更するなど、何らかの対応を検討するよう求めている。
子供の後遺症についても、医療関係者や教職員らを対象にしたオンラインの研修会を開くなど、理解を深める取り組みを進めている。
新型コロナの後遺症には確立された治療法はなく、医療現場での対応は対症療法にとどまっているのが現状とされる。一方で、各国で続けられる研究により新たな治療法が取り入れられる可能性もあり、都の担当者は「一人で悩まず、窓口での相談や受診を考えてほしい」と話している。