新型コロナウイルス対策の持続化給付金と家賃支援給付金の支給対象から性風俗事業者を除外した規定は、法の下の平等を定めた憲法14条に反するとして、事業者が国に計約450万円の賠償などを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁は5日、請求を棄却した1審・東京地裁判決(2022年6月)に続き、事業者側の敗訴とする判決を言い渡した。
松本利幸裁判長は、国が性風俗事業者を給付対象から除外したことについて、「納税者(国民)の理解を得ることが困難と判断したもの」と指摘。除外規定には合理性があるとし「合憲」と判断した。
原告は関西地方にある無店舗型性風俗店(デリバリーヘルス)の運営会社。20年9月、新型コロナの影響で売り上げが減少したとして、持続化給付金200万円と家賃支援給付金約100万円の支給を中小企業庁に申請したが、支給対象を定めた規定がデリバリーヘルスを除外していることから認められなかった。
事業者側は「合法に営業しているのに差別的取り扱いを受けた」として、両給付金計約300万円に加え、150万円の損害賠償の支払いを国に求めて20年11月に東京地裁に提訴した。
地裁判決は、客から対価を得て一時的に性的好奇心を満たすという性風俗の営業は「大多数の国民が共有する性的道義観念に反する」と指摘。公金で性風俗事業者を下支えすることを相当でないとした規定は合理的理由のない差別とは言えず、憲法14条に反しないと結論付けた。
一方で、地裁判決は「性風俗業の事業者や従業員であっても個人として尊重されるべきことは当然で、職業に基づく差別は許されない」とも付言していた。【巽賢司】
法の下の平等に反する余地ある
■松本和彦・大阪大教授(憲法学)の話
東京高裁判決は、国民の性の在り方に関する価値観の変化に対し、1審よりも配慮した印象を与えるものの、性風俗事業が国民の性的道義観念に反すると判断した根幹部分を変えなかった。ある職業を一律に給付の除外対象とすることが、その職業を卑しめ、そこで働く人をおとしめる効果を生むことに配慮していない。個人の尊厳を傷つけることも否定できない以上、法の下の平等に反するところがあると言う余地もあったのではないか。