4人死亡の朝日岳、強風と低気温 専門家「危ないと思えば引き返す決断を」

栃木県那須町湯本にある朝日岳(1896メートル)の登山道付近で7日、60~70代とみられる男女4人の遺体が見つかった。強風が吹き荒れ、気温が低下して登山を断念する人もいる中で、4人に何が起きたのか。関係者は、悪天候下での登山の強行が遭難死につながる危険性を指摘する。
「数人が倒れて動けない」。県警によると、登山客らから通報があったのは6日正午過ぎ。県警は2次災害の懸念から救助を一度断念し、翌7日朝からの救助活動で4人を発見した。通報などによると、一部は体の中心部の体温が低下して変調を来す低体温症にかかっていた可能性がある。
「冬用の登山服の上下を着込まないと寒さをしのげないぐらいだった」
7日の捜索に加わった「栃木県山岳・スポーツクライミング連盟」遭難対策委員長の増渕篤史氏は、4人の発見現場付近の状況をそう語る。
登山道が急で、岩が転がっているなど、現場に設置された鎖を頼りにしないと登れないような場所もある朝日岳。捜索に参加した7日早朝は、気温が低いだけでなく、風速15メートル以上の風が常に吹き、時には25メートル程度の突風も吹き荒れるなど滑落の危険性も高い状況だった。
通報のあった前日の6日はさらに荒れ模様だったといい、増渕氏は「登山のベテランでもためらうぐらいの状況だっただろう」とみる。
実際、登山客も利用する朝日岳の麓にある「那須ロープウェイ」では6日朝、強風などで登頂を断念し、ロープウェイの山頂駅から引き返す客が相次いでいた。
ロープウェイの担当者によると、朝日岳ではここ1週間で冷え込む日が増えていたが、夏用の軽装のままの登山客もみられたという。
増渕氏は「朝日岳では過去にも強風で身動きが取れず、遭難した事故があった。危ないと思えばすぐに引き返す決断が必要だ」としている。

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