「トイレ菌」といじめ 静岡市や担任などの責任認めず 地裁判決

静岡市立千代田小で2017年にいじめを受けて適応障害を発症したなどとして、当時小学5年だった男子生徒(16)が、市や担任、同級生らに約2000万円の損害賠償を求めた裁判の判決で、静岡地裁(菊池絵理裁判長)は12日、生徒の訴えの一部を認めて、被告の保護者らに慰謝料など計88万円の支払いを命じた。無理やりズボンを降ろされて裸にされたなどの暴力行為や、市や当時の担任などの責任は認められなかった。
訴状などによると、生徒は小学5年だった2017年秋ごろから、同級生に「トイレ菌」などとあだ名で呼ばれるようになった。生徒の机や所持品をクラスメートが触り、その手で別の児童を触る「菌まわし」と呼ばれるいじめなどを受けるようになった。生徒はその後、不登校になり、18年1月には適応障害や機能性難聴と診断された。同年の春に転校したとしている。
菊池裁判長は判決理由で、「菌まわし」については「悪質な行為であり、行為に合理的な理由がない」と加害者の少年らの違法性を認めた。一方で、みぞおちを殴るなどの暴力行為については「認めるに足る証拠がなかった」とした。
判決後、生徒は同市内の県庁記者クラブで会見を開いた。黒いジャケットに身を包んだ生徒は、ため息交じりに「非常に残念な判決。6年間は何のための時間だったんだ」と悔しさをにじませた。いじめの後遺症で、聴力が低下する機能性難聴や味覚障害が残っていることに触れ、「体調は一向に良くならない。証拠もまだあるので納得できるまで闘い抜く」と前を向いた。
生徒の母親(40)はうつむきながら、「事実をねじ曲げられた。自分たちの主張は受け入れてもらえなかった」と話した。代理人の小川秀世弁護士は判決内容を「非常に安っぽい」と指摘。「暴力行為が認定されなかったのは誠に遺憾」と語り、少年と母親が控訴する方針については、「最後まで一緒に戦う」と語った。
静岡市は「本市の主張が認められたと理解している」とコメントを出した。【丘絢太】

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