処理水めぐり日本に“脅迫電話” 嫌がらせ行為も… 中国人の“本音”は?

処理水の海洋放出を巡り、中国から日本への“迷惑電話”など、嫌がらせ行為が相次いでいます。一方、日本に来る中国人観光客の中には、処理水を気にしないという人もいました。なぜ受け止めに差が出ているのか、彼らの本音を探りました。
中国のSNSに投稿されたのは、男性がスマートフォンで電話をかける様子です。電話の相手は――
「はい、参議院でございます」
男性
「もしもし」
「はい」
男性
「なぜ核汚染水を海に流したんだ?」
中国人の男性が、処理水について日本の参議院に抗議したとする動画です。
さらに、日本の飲食店へ電話した動画もありました。
「なぜ原発の核汚染水を海に放出するのか? まだ海に行ったことないのに。海に排出したら俺はどう遊べばいいんだ」
処理水の海洋放出を巡り、今、中国から日本へ“嫌がらせ電話”をする動画投稿が相次いでいるのです。
実際に福島市の飲食店には「なぜ核汚染水を海に放出したのかを聞いてるんだ」とまくしたてるように話す、中国人とみられる電話がかかってきていました。
福島県の旅館には“脅迫”めいた電話もあったといいます。
女将 二瓶明子さん
「予約の電話かなと思って、お電話を受けたんですけど、『殺すぞ』とか『爆破するぞ』とか、カタコトの言葉で脅迫みたいな感じで。検査して世界一安全な食材が福島には流通していると思っていますので、自信を持っていますから、そんなこと言われたくない」
さらに“嫌がらせ電話”は、警視庁の複数の警察署や東京消防庁の代表電話にも複数件かかってきているということです。
福島第一原発の処理水の海洋放出は、24日から始まりました。中国はこれに強く反発し、日本の水産物の輸入を全面禁止にしました。さらに水産物の加工品の購入や使用も禁止としました。
この措置に嘆いていたのは、日本の食品を輸入する業者です。
日本の食品の輸入業者
「今後、輸入ができなくなってしまいます」
冷凍庫に保管されていたのは、残りわずかのアイスです。原材料に海水が使われているため、輸入通関で止まり、商品が届かないというのです。
日本の食品の輸入業者
「今すでに困難に直面している状態です」
日本円にして600万円ほどの損失が出ているということです。
中国・北京市内にあるショッピングモールでは、日本食レストランで“無数の日本語”が並んでいるのに、日本から仕入れた食材ではないことを全面にアピールしていました。注文したサーモンには、ノルウェーの国旗が添えられていました。
関係者によると、ショッピングモール側が「日本産は使っていない」という趣旨の張り紙をするよう通達してきたということです。
処理水を巡っては、日本人への直接的な“嫌がらせ行為”も多数確認されています。日本人学校に石や卵が投げ込まれる事件が発生し、上海では通学中の在校生に大声で怒鳴る男が目撃されています。
中国のSNS上には「処理水を心配する必要はない」といった冷静な意見も投稿されていますが、こうしたものは削除され、見ることができない状態になっています。海洋放出に抗議する中国当局の意向と異なる内容は、削除された可能性があるということです。
では、日本に来る中国人は今回の“処理水放出”をどう受け止めているのでしょうか。話を聞いてみました。
中国から来た観光客
「(処理水は)海に流さない方がいい。短期間では影響ないかもしれないが、長期間だと心配です」
中国から来た観光客
「人体にどんな影響があるのか心配。日本のすしは食べたことがあるけど、今は心配してます」
日本の魚を我慢する人がいる一方――
中国から来た観光客
「すしを食べた。基準値を超えてなければ大丈夫だろう」
日本に来てから“魚ざんまい”の中国人観光客もいました。
中国から来た観光客
「マグロが一番好き。(処理水は)あんまり気にしない」
24日はマグロがふんだんにのった「海鮮丼」を堪能し、25日はマグロなどが入った「刺身盛り合わせ」や「カニの甲羅焼き」。「サラダ」もマグロ入りと、“海鮮まつり”の食事を楽しんでいました。
28日も「築地ですしを食べようと思っている。日本産はおいしい」と話し、“本場”築地にすしを食べに行きました。
ほかにも、家族で仲良くすしを食べる中国人観光客の姿もありました。

なぜ“処理水”への受け止めに差が出るのでしょうか。身分を明かさないことを条件に、中国の“実情”を明かしてくれた人は――
中国から来た人
「ずっと日系企業で働いてきたから、(処理水は)そんなに大きい問題はないんじゃないかと思ってる」
自身は日本の“処理水”に何ら心配はしていないものの――
――(中国で)自分の意見が言いにくいとか?
中国から来た人
「ありますね、あんまりしゃべりにくいのかなと思う。一般市民が知らない情報もたくさんあると思いますので」
知らされている情報が不十分な可能性もあると指摘。中国国内で「福島の魚を食べると言ったら叩かれる」と話した人もいました。
日本の水産物は大きな打撃を受けています。
ホタテが名産の北海道別海町は、一番の取引先だった中国の輸入全面禁止を受け、SNSに「ホタテに関しては、当面寄付額を堅持し、この機会に、より一層の応援を国民の皆様にお願いすることといたしました」と投稿。10月からの値上げを見送り、ふるさと納税への寄付を呼びかけたのです。
すると、去年の同じ日と比べて寄付額が大幅にアップしたといいます。
別海町総合政策課長 松本博史さん
「5倍から8倍です。寄付というかたちで応援をいただいております」
そのSNSには続きがあり、「また、ホタテに限らず、そして本町(別海町)に限らず、福島県産、東北を含めて、国内水産物の消費拡大をお願いいたします」と投稿。最も苦しい立場にある福島や東北にエールを発信していました。日本の消費者の協力も呼びかけています。

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