今月5日、大津市南船路の沖合約200メートルの琵琶湖で、ヨットとカヌーが転覆し、ヨットに乗っていた男性(62)が死亡した。当時、現場では「比良おろし」と呼ばれる強風が吹いていた。滋賀県内では悪天候予想にも関わらず、琵琶湖や山岳でのアウトドアレジャーで、事故が相次ぎ、死者も出ている。今回の船舶事故についても彦根地方気象台は「事前に気象状況を把握していれば、未然に防ぐことができる事故だった」とし、異例の注意喚起をしている。
強風注意報発令
ヨットとカヌーが転覆したのは5日午後1時半ごろだった。
滋賀県警大津北署によると、男性らはグループで遊びに来て、ヨットに2人、カヌーに2人が乗っていた。このうち、ヨットに乗っていた男性が行方不明となった。ほかの3人は近くのマリンレジャー関係者に救助され、けがはなかった。
男性は6日、琵琶湖の沖合約120メートルで、水深約5メートルの湖底に沈んでいるのを地元消防に発見された。死因は溺死だった。
彦根地方気象台によると、5日昼ごろには前線が通過し、北寄りの風が急激に強まる予想だった。そのため、同日早朝に強風注意報を発表していた。
大津北署によると、事故当時、現場では強風が吹き、湖面が波立っていた。「比良おろし」が吹いていた。
比良おろしは、琵琶湖西岸に連なる比良山地から琵琶湖に向かって吹く局地的な北西風。湖上では秒速20メートルを超える風が吹き、水しぶきが舞い上がることもあるという。
同気象台の小野善史・防災気象官は、「比良おろしは冬場に多いが、条件によっては季節に関係なく、極端に強い風が吹き降ろす」と解説する。
都合のいい解釈は
気象状況によるアウトドアレジャーの事故は、湖上だけではない。
昨年9月2日には滋賀県東近江市黄和田町の黄和田キャンプ場を利用していた男女2人が行方不明になった。
東近江署によると、キャンプ場から約1キロ下流の愛知川で、2人の乗っていた乗用車が大破して見つかった。付近は同2日夜から3日明け方にかけて激しい雨が降り、愛知川も増水していたという。2人は今も行方不明。
同気象台は、2日午後5時すぎ、大気が不安定な状況だとして東近江市に大雨注意報を発表していた。
小野防災気象官は、「滋賀には琵琶湖、山などアウトドアレジャーの資産が多い。新型コロナの影響も収まり、週末や休暇などで県外から訪れる方も多い。ただ、休みに合わせてのレジャーなので、天候を自分の都合のいいように解釈してしまう」と指摘。その上で、「事前に気象状況を把握するとともに実測値も知り、しっかりと判断してほしい。楽しいレジャーを悲劇にしてほしくない」と強く訴えていた。(野瀬吉信)