4年前に京都ホームステイの女性「夫は徴兵された」…メッセージの後、音信不通に

イスラエルが地上作戦の準備を進める中で、パレスチナ自治区ガザを巡る情勢は緊迫の度合いを増している。双方の若者を支援してきた日本の関係者は、現地の人々の無事を祈りつつ、事態が早く沈静化するように願っている。
「とにかく2人に無事でいてほしい」。イスラエルとパレスチナの若者をホームステイで受け入れた京都府綾部市の旅行業、佐々木崇人さん(45)は祈るように話した。
同市は約20年前から紛争遺児らを招いて交流するプロジェクトを続けており、佐々木さんは2019年8月、20歳代の女性2人を受け入れた。イスラエル側はミハル・エリーザーさん、パレスチナ側はルアンダ・アクタムさんで、いずれも大学生だった。
2人は佐々木さん宅で2~3日間を一緒に過ごした。当初、打ち解け合えるか心配したが、1日早く到着したエリーザーさんがアクタムさんに箸の使い方を教えたり、一緒に浴衣を着て記念撮影をしたりして楽しんだ。
佐々木さんは「大学生同士、国や立場に関係なく仲良く過ごしていた」と振り返る。
現地の情勢が緊迫する中、佐々木さんは11日、エリーザーさんに安否を確認するメッセージをSNSで送信した。12日には「夫は徴兵され、生まれたばかりの娘と暮らしている」「平和を祈ってください」などの返信があった。
佐々木さんはその後も「無事を祈っています」と送信したが、既読にはなっていないという。
連絡先がわからないアクタムさんの安否は不明のままだ。「戦争や暴力に2人が巻き込まれることがないように、平和が早く訪れることを祈りたい」と話した。

「1人も犠牲になってほしくない」。認定NPO法人「聖地のこどもを支える会」(東京)の井上弘子理事長(84)もそんな思いを抱いている。
1990年、有志の仲間とともに、パレスチナの子どもの学費を支援する基金を設立。活動を続ける中で、「次世代の平和を担うイスラエルの若者にも寄り添うべきだ」と考えるようになった。2005年以降、双方から計100人以上の若者を日本に招き、約2週間の共同生活を通じ、相互理解を深めてもらう取り組みもしてきた。
井上さんは、軍事衝突が起きた後、支援で関わってきた若者らに電話やメールで安否確認を続けている。「私たちのため祈ってほしい」「早く平和と安全が訪れてほしい」といった返答がある一方で、ガザに住む知人の中には避難できていない人もいるという。毎晩のように「大丈夫?」と尋ねている。
井上さんは「こんな事態になって、むなしい気持ちになる。一刻も早く、事態が収束してほしい」と感じている。

自衛隊もイスラエルから在留邦人を退避させる態勢を強化している。同国内には、1000人以上の邦人が滞在しているとされる。
防衛省は17日、日本を出発した航空自衛隊の空中給油・輸送機「KC767」と輸送機「C2」の計2機が、隣国のヨルダンに到着したと発表した。
同省によると、2機は14日に自衛隊の海賊対処活動の拠点があるアフリカ東部ジブチに向けて出発したが、邦人の輸送を迅速に行うため、目的地をイスラエルにより近いヨルダンに変更していた。16日には別の空自輸送機1機がジブチに到着している。
村井英樹官房副長官は17日の記者会見で、自衛隊機によるイスラエル在留邦人の退避活動を今週後半にも実施する方向で調整していると明らかにした。希望者を対象に、ヨルダンからイスラエル最大都市テルアビブに輸送機を派遣し、出国させる方針とみられる。

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