今年8月に佐賀県唐津市の養豚場で発生した豚熱について、県は新たな感染が確認されなかったためすべての制限を解除しました。ただ、周辺の養豚場では依然として感染への警戒が続いているほか、ワクチン接種にかかる費用が、飼料高騰に悩む農場に追い打ちをかけています。
◆19日すべての制限を解除
今年8月、唐津市の養豚場で九州では31年ぶりとなる「豚熱」の感染が確認されました。その翌日には約800メートル離れた肥前町切木の養豚場でも感染が判明。自治体職員や自衛隊などのべ5000人近くを動員し、1万頭を超える豚が殺処分されました。その後、新たな感染が確認されなかったため、県は19日、発生農場から3キロ以内にある養豚場の移動制限を解除し、畜産関係の車両の消毒ポイントもすべて廃止しました。
◆「とにかく怖い」警戒続く農場
感染は終息したものの周辺の自治体では依然として警戒が続いています。唐津市のお隣、福岡県糸島市にある「井上ピッグファーム」では、約9000頭の豚を飼育しています。
井上ピッグファーム 井上博幸社長
「もうウイルスなんで車にひっついてくるとかどこから飛んでくるかわからないわけじゃないですか」
この養豚場では唐津市で豚熱が確認されてから出入りする車両の消毒を1回から3回に増やしました。ウイルスを媒介するおそれがあるネズミなどの駆除も定期的に行っているほか、イノシシなどが入らないよう農場の周辺を柵で囲んでいます。
井上ピッグファーム 井上博幸社長
「柵があってもここの畑に、ここって山なんでイノシシとかいる場合があるんですよ。やっぱり怖いですよ、怖いです、とにかく怖いです」
◆「餌も高い ワクチンも・・・」
9月から九州各県で豚熱のワクチン接種も始まりました。この農場では毎月約1200頭が生まれるためワクチンを打つのも一苦労です。飼料の高騰が続く中、月に10万円を超えるワクチンの費用や風評被害に頭を悩ませています。
井上ピッグファーム 井上博幸社長
「心配する人ばかりです。『ワクチンを打ったけど大丈夫?』ってよく聞かれます。いま餌も高いし、豚熱のワクチンを打たなければいけない費用も出てきてやっぱり農家の方みんな大変だと思います。国や県に少しでも考えてもらえたらと思いますね」
◆佐賀の豚熱 中国地方の野生のイノシシ由来か
国の調査チームが遺伝子解析をした結果、唐津市で見つかった豚熱のウイルスは、山口県の野生のイノシシで見つかったウイルスに最も近いことが分かりました。このため、中国地方西部の野生のイノシシに接触した人や車などを介して、持ち込まれた可能性があるということです。2018年以降、全国で発生が相次いでいるだけに再び感染が広がらないよう対策が必要となります。