岸田首相が言い出した「季節外れの花粉症対策」は増税の口実 国民1人1000円が「森林環境税」として住民税に上乗せ

解散風が吹き荒れていた永田町に、突如「減税」議論が巻き起こった。「増税マシーン」と化した岸田文雄・首相が甘い言葉を口にするからには裏がある。首相の背後には、国民を欺く「増税のための偽装減税」を囁く財務官僚たちがいる。
増税メニューは目白押し
次なる増税計画はすでに動き始めている。それを示すのが、岸田首相が言い出した季節外れの「花粉症対策」だ。
「花粉症は、いまだ多くの国民を悩ませ続けている社会問題といえるものです。来年の飛散時期が近づくなか、国民の皆さんの安心・安全の確保に向け、花粉症対策を強力に進めます」
首相は10月11日の関係閣僚会議でそう表明したが、裏には増税が隠されている。
来年4月、「森林環境税」(国税)が創設され、国民1人1000円が住民税に上乗せされる。財務省取材の経験が長いジャーナリストの長谷川幸洋氏(元東京・中日新聞論説副主幹)が語る。
「これは震災復興のための復興特別税の期限が来年切れて税金を徴収できなくなるから、財務省と林野庁が組んで森林環境整備という批判されにくいもっともな理屈をつけて恒久財源にしたもので、明かな増税です。実は、財務省は新税創設に先立って5年前から自治体に森林環境整備の補助金を出しているが、交付した補助金の半分近くが使われずに余っている。それなのに増税はやめたくないから大義名分が必要になった」
そこで急遽、編み出したのが「花粉症対策」であり、全国の杉を伐採し、花粉が少ない杉や他の樹木に植え替えるという増税の口実だ。今年4月に関係閣僚会議が設置され、わずか3回の会議を経て発表された。
森林環境税以外にも増税メニューは目白押しだ。
政府与党は倍増させる防衛費の財源に充てるために早ければ2025年度から所得税、法人税、たばこ税を増税する方針を決めており、さらに「異次元の少子化対策」の財源として、国民が支払う健康保険料に少子化対策の「支援金」を上乗せする。そのために首相は今年7月にこども家庭庁に「支援金制度設立準備室」という部署を新設して保険料引き上げの準備を進めさせている。
自民党の石破茂・元幹事長は「税収が伸びた分は当面、防衛費や少子化対策にこそ充てるべきだ」と主張しているが、まっとうな意見だろう。
首相が防衛増税や少子化対策の社会保険料引き上げを撤回せずに、口では「減税、社会保障負担の軽減」というのは、それが財務省にそそのかされた増税のための“偽装減税”だからに他ならない。経済ジャーナリストの荻原博子氏が指摘する。
「そもそも岸田さんは消費増税しないと言ってきましたが、この10月のインボイス導入によって、免税されていた年商1000万円以下の人から消費税を徴収するようになっているので、事実上の消費増税を行なっているのです。
税収増を本当に国民に還元するというなら、一時の減税や給付金ではなく、恒久減税にするべきです。10兆円の税収増を全部消費税で還元するならずっと税率6%に下げられるし、所得税なら税率を半分にできる。そのくらいしないと還元とはいえない。選挙向けの一過性のバラマキなら国民は納得しませんよ」
国民への誤魔化しは通用しない。財務省に操られる岸田首相も、操る財務省もそれを知るべきだ。
※週刊ポスト2023年10月27日・11月3日号

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