インフルエンザが早くも猛威をふるっている。厚生労働省は20日、全国約5000の定点医療機関に9~15日に報告された感染者数は5万4709人で、1医療機関当たり11・07人だったと発表した。前週比1・11倍で、自治体の「注意報」の基準となる10人を超えた。過去10年で最も早い。冬場の大流行も懸念され、医薬品の不足も指摘されるが、どう備えるべきか。
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免疫ない子供注意
東海大学医学部付属病院高度救命救急センターの守田誠司所長は「通常は11月ごろから出てきて冬に流行するが、今年は9月ごろから増加傾向にある。この勢いだと冬に大流行する可能性が高い」と懸念する。
浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫医師は「インフルエンザウイルスの免疫がない子供は感染しやすく、感染すれば、家族など周囲の大人にうつすことが懸念される。冬場は気温も低下し空気も乾燥するため、感染しやすい」と語る。
医薬品不足長期化
日本医師会は6日、ジェネリック医薬品(後発薬)メーカーの不祥事や新型コロナの流行などで長期化している医薬品不足について、医師会員にアンケートをした結果を公表した。
院内処方をしている医療機関の9割が「入手困難な医薬品がある」とし、院外処方の医療機関は7割以上が薬局から薬不足の連絡があったという。
せき止め薬や、去痰薬、解熱鎮痛剤など呼吸器症状に関わる医薬品の不足が目立つという。
前出の守田氏は「クリニックの外来などを手伝うこともあるが、処方しようとした抗生物質がなく、効果が近い代替の抗生物質を選択することも多い」と明かす。
ゾフルーザ、タミフルといった抗インフルエンザ薬は医療機関に安定供給をするために政府が調達する。厚労省は7月、ゾフルーザを約143万5000人分、タミフルを約44万人分調達する契約を結んだ。ただ、「感染者が今以上に増加すれば、インフルエンザ薬が不足する懸念もある」(守田氏)という。
解熱剤家族分確保を
今後のインフルエンザ薬の供給について、厚労省の担当者は「今後の感染拡大が影響してくるので、まったく問題ないということは難しい」とコメントした。
また、インフルエンザワクチンは、通常年の使用量が3000万本以下とされるが、今年度の供給量は3121万本となる見込みだ。同省は「需給が逼迫(ひっぱく)する可能性は低い」としている。
前出の矢野氏は「せきが出始めたら、マスク着用は必須で、普段から睡眠をしっかりとることも大事だ。家族全員が1日分程度飲める解熱鎮痛剤を確保しておいてもよいだろう」と提案した。