旧統一教会に解散命令請求へ 文科省、高額献金の組織的な関与を認定

文部科学省は、金銭トラブルが問題化している世界平和統一家庭連合(旧統一教会)について、東京地裁に宗教法人法に基づく解散命令を請求する方針を固めた。霊感商法や高額献金を巡っては、教団側の不法行為を認めた民事判決が多数あり、正体を隠した勧誘手法が長期にわたり全国的に類似していることなどから教団の組織的な関与が裏付けられたと認定。同法が解散命令の要件とする「法令違反」に該当し、解散請求が妥当と判断した模様だ。
文科省は、宗教法人法に基づく「質問権」を行使した旧統一教会の調査で、教団が質問に適切に回答していないとして、9月中にも行政罰である「過料」の適用を裁判所に求めることを検討。質問権による調査は効果が薄いため、見切りを付ける方針だ。解散請求の具体的な時期については、岸田文雄首相が内閣改造や総選挙の日程など政治情勢も考慮するが、年内の判断を目指す見通しだ。
同法は81条で、解散命令の要件について「法令に違反して、著しく公共の福祉を害すると明らかに認められる行為」などと規定。所轄庁(文科省または都道府県)は「法令違反」などの疑いがある場合に質問権を行使し、要件が確認できれば解散命令を裁判所に請求できるとしている。
岸田首相は昨年10月、安倍晋三元首相の銃撃事件(同7月)をきっかけに旧統一教会の金銭トラブルが改めて問題視されたため、永岡桂子文科相に解散命令請求を視野に入れた教団への質問権行使を指示。請求の可否を判断するよう求めた。
文科省の外局・文化庁は、高額献金、霊感商法などを巡り、教団や信者らの不法行為責任を認めた民事訴訟の判決(1994~2020年)が計22件、損害賠償額は少なくとも約14億円に上るとし、これらをベースにした調査に着手。教団のガバナンス(組織統治)と金銭の流れを解明することで、ノルマを信者に課すなど、個別トラブルに教団が組織的に関与したことの立証を進めてきた。
質問権は昨年11月以降、今年7月までに計7回行使し、教団の運営体制や財務状況、献金など延べ600項目以上について資料の提出を繰り返し求めた。だが、回を重ねるにつれ回答文書の量が減少。政府関係者によると、教団は「信教の自由」などを理由に適切に文書を提出せず、質問権による調査は難航していた。
一方、被害者救済に取り組む「全国霊感商法対策弁護士連絡会」の協力も得て被害者にヒアリングを重ねた。収集した多数の金銭トラブル事例を分析したところ、霊感商法や高額献金の勧誘に関し、教団の正体を隠した手法などが全国的に類似しており、文化庁は教団の組織的な意向を受けて信者が動いたとみている。
また、教団が信者らに法令順守を徹底させるとした「コンプライアンス宣言」(09年)以降も、不法行為が続いている実態を把握。文科省は、昨年10月の参院予算委員会で岸田首相が解散請求の要件として示した「行為の組織性、悪質性、継続性」を満たしたと判断したとみられる。
東京地裁は請求を受理後、非訟事件手続法に基づき、解散命令を出すかどうかを非公開で審理する見通しだ。地裁決定に不服があれば、高裁、最高裁で争う。解散命令が出れば、旧統一教会は宗教法人格を失って任意団体となり、税制優遇が受けられなくなる。
「法令違反」を理由に解散命令が確定した宗教法人は、過去、地下鉄サリン事件などを起こしたオウム真理教と霊視商法詐欺事件の明覚寺(和歌山県)の2例のみ。【深津誠、二村祐士朗、李英浩】

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