ニュース裏表 平井文夫 三十数年ぶり政治改革「透明化と厳罰化」進むが…〝政治的自由〟失う 岸田首相ほくそ笑む「小渕の乱」も依然厳しい国民の目

先週木曜(25日)、自民党の小渕優子選対委員長が茂木派(平成研究会)からの退会を表明したと聞き、「これは岸田文雄首相の思い通りになってきているぞ。もしかしたら、週末の世論調査の内閣支持率は上がるのかもしれない」と思った。
だが、支持率は毎日新聞が前月比で5ポイント上昇したものの、日経新聞は1ポイント上昇にとどまった。
先週の調査では、FNN(フジニュースネットワーク)・産経新聞が5ポイント上昇したが、朝日新聞は横ばい、読売新聞は1ポイント減だった。全体の傾向としては、昨年来の下落傾向はようやく止まったが、まだ上昇には反転していない。
岸田首相が「岸田派(宏池会)解散」を発表し、これに安倍派(清和政策研究会)、二階派(志帥会)、森山派(近未来政治研究会)は追随したが、麻生派(志公会)と茂木派は後ろ向きだった。しかし、小渕氏の退会に続き、茂木氏と折り合いが悪いとされていた参院からも数人が退会を表明したことで、茂木派の結束は急速に弱くなっている。
実力があり、やや強引な茂木氏に対して警戒感を持っていた岸田首相は、今回の「小渕の乱」を聞いて、ほくそ笑んだに違いない。
だが、岸田政権を見る国民の目は依然厳しい。
毎日の調査では、連座制について「導入すべき」が87%にも上っているのに対し、岸田首相が岸田派の解散を6派閥の中で最初表明したことに対しては、「評価しない」の44%が「評価する」の40%を上回っている。国民の関心は「派閥の解散」ではなく「厳罰化」であり、もう一つは「透明化」である。
月曜(29日)に、衆参両院の予算委員会で行われた集中審議では、与野党から厳罰化については「政治資金規正法への連座制の適用」、また透明化については「政策活動費の廃止」などを求める声が出た。
だが、岸田首相は連座制については「各党と議論する」、政策活動費については「政治活動の自由と国民の知る権利のバランスで考える」と述べて、どちらも言質を取らせなかった。
野党各党は温度差はあるが政治改革案を出しており、「政策活動費の廃止」「企業団体献金の禁止」「パーティー券の規制」「連座制の導入」などを提案しており、このうちのいくつかは実現するだろう。
ただ、岸田首相の言う「政治活動の自由」は非常に重要だ。首相も言及したが、米国でもこの「政治活動の自由」を尊重した判例がある。
30年ほど前の政治改革では、政治家と特定の団体や企業との癒着を断ち切るために、献金やパー券の規制を厳しくして額を減らし、その分を政党交付金として税金から配ることになった。この改革を否定はしないが、「政治活動の自由」が制限されたというのも事実だ。すなわち支援したい政治家に自由に支援できなくなった。
三十数年ぶりの「政治改革」という大きな流れの中で、「透明化」「厳罰化」のために「政治活動の自由」はさらに失われることになるだろう。筆者はそれをいいことだとはあまり思わないのだが。 (フジテレビ上席解説委員 平井文夫)

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