高齢化に伴う死者数の増加で、遺体を長期間火葬できない「火葬待ち」が問題になっている。業界団体が今年6月に発表した初の全国調査では、6~8日間の火葬待ちが全国で生じている実態が浮き彫りとなった。火葬を待つ間に、遺族には心理的・金銭的な負担がのしかかっている。
今年1月に父親を亡くした大阪府守口市の女性(50)は、「葬儀場から遺体安置に1日2万円ほどかかると言われ、あきらめた」と語る。火葬までの5日間、女性はひつぎを自宅に置かざるを得なかったという。「冬場だったが遺体が傷んだため、化粧で隠して送り出した。できればきれいなまま送ってあげたかった」と振り返る。
ここ数年、人口が集中する都市部を中心に火葬待ちが起きている。厚生労働省の人口動態統計によると、2022年の死者数は過去最多の156万8961人で、前年から12万9105人増えた。12年の死者数は125万6359人で、この10年で死者数は1・25倍と「多死社会」を迎えていることが背景にある。
死者数の増加に伴う問題を調べるため、公益社団法人「全日本墓園協会」(東京)は厚労省の補助を得て22年、全国の火葬場と葬儀場を対象に初めてのアンケート調査を実施した。
20年度中に、施設内に遺体を安置したと回答した177施設に、その理由(複数回答)を尋ねたところ、最も多かったのは「火葬の順番が回ってくるまでの待機」で44・1%だった。その火葬待ちの最大日数を尋ねたところ、「6~8日」が最も多く31・4%。次いで「2日超、3日まで」が16%、「3日超、4日まで」が13・7%だった。
同協会は「調査対象とした20年度はコロナ禍と重なるが、葬儀件数は前年度から増えておらず、影響はないとみている」と分析している。
人口377万人と国内最大の基礎自治体である横浜市によると、市営火葬場の火葬待ち日数は、20年度は平均4~5日だったが、22年度は5~6日に延びた。このため同市は約221億円をかけ、新しい火葬場を建設している。
ただ、横浜市のように火葬場を新設するには、予定地周辺の住民から理解を得なければならず、簡単ではない。また、40年代には国内の死者数はピークアウトするため、新設を検討する自治体は少ない。
調査を行った全日本墓園協会の横田睦・主管研究員は、「火葬場の増設は容易でない。縁起が悪いと避けられてきた友引の日に火葬を行ったり、空いている時に先に火葬を済ませたりするなど、社会全体で弔い方を考え直す必要がある」と指摘している。