「家を燃やすと5回ぐらい脅されて…」ルフィ一味の運搬役が犯行グループから抜けられなかった“壮絶な理由”

「社会復帰できたら、二度とこのような過ちを犯さないようにしたいです」
7月31日、東京地裁の512号法廷。短髪に黒いTシャツ、モスグリーンのハーフパンツ姿の宮沢優樹被告(22)は、ずんぐりとした体を丸め、消え入りそうな声で証言した。「ルフィ事件」を解明するキーマンの一人は、いかに悪党の走狗と成り果てたのか。
◆ ◆ ◆
京都市の貴金属店強盗事件にも深く関与
司法担当記者の解説。
「宮沢は昨年4月から6月にかけ、特殊詐欺の“受け子”として暗躍。正体不明のルフィの指示を受け、警察官や金融庁職員等に成りすまし、高齢者宅を訪れてはキャッシュカードを騙し取っていました」
宮沢は昨年5月2日、ルフィ一味が特殊詐欺から手荒な強盗に舵を切る転機ともなった、京都市の貴金属店強盗事件にも深く関与。
「事件後、宮沢は岐阜県のコインロッカーに移されていた京都事件の被害品、ロレックスなど腕時計11点を新幹線で東京まで持ち運び、換金役に渡した。さらに買取店などで換金された約100万円を回収し、ルフィが指示する先に振り込んでいました」(同前)
指定された口座は、りそな銀行札幌支店の「イマムラキヨト」名義。
「この口座はめくれない(バレない)から」
宮沢にそう説明していたルフィの正体こそ、今年2月にフィリピンから移送されたルフィグループ幹部の一人、今村磨人被告(39)本人だったのだ。
「あいつには絶対金を貸すな」同級生の間で警告が回り始める
宮沢は東京都板橋区で育った。祖父、母親と3人暮らし。子供の頃は溌溂とした野球少年で、地元の小中学校を卒業後、都内の私立高校に進学。友人が語る。
「あだ名は“ミヤジ”。ヒップホップが好きで、ムードメーカー的な存在。友達が多く、同期や後輩からも慕われていました」
高校でも野球を続け、2018年に迎えた最後の夏は、主に一塁手として東東京大会に出場した。
「3回戦、1点差で負けました。ミヤジは自分のエラーが失点に絡んだことを悔いて、試合後は大泣きしていた」(チームメイト)
卒業後は、建設関係の会社に就職。当初は真面目に働いていたが、1年が経った頃、宮沢の同級生の間でこんな警告が回り始める。
「ミヤジがめっちゃ『金貸して』と言ってくる。あいつには絶対金を貸すな」
ルフィの仲間である「ゾロ」から提示された仕事内容は…
原因は、宮沢が詐欺話に引っかかった上、オンラインカジノのバカラにのめり込んだことだった。友人に金を無心しまくった挙句に闇金にも手を出した。宮沢の借金の総額は、闇金の利子300万円を含めて最大で1000万円に膨らんだ。
返済の督促に怯え、会社も辞めた。切羽詰まった宮沢は昨年4月初旬、ツイッターで“資金調達”のキーワードを漁り始める。そこに忍び寄ってきたのが、原作漫画でもルフィの仲間である「ゾロ」なる存在だった。宮沢がすがる思いで20万円の借り入れを頼み込むと、ゾロは快諾しつつ、こう告げる。
「仕事を手伝ってくれたら返済はしなくていい」
提示された仕事は「現金の回収」。そして依頼主のルフィを紹介され、実際に加担したのが、前述の高齢者からキャッシュカードを騙し取る犯罪行為だった。
宮沢が関わった特殊詐欺の被害総額は約1500万円
宮沢は、詐欺と気づきながら抜けられなかった壮絶な理由を法廷でこう述べている。
「現金が欲しかったのと、自分の下手打ち、寝坊や遅刻で収益が得られなかったことがあり、ルフィに脅されていた。住所や家族を知られていて『家まで回収に行く』とか『家を燃やす』と5回くらい脅された」
宮沢が関わった特殊詐欺の被害総額は、約1500万円。宮沢の報酬は経費を引き、100万円ほどだった。
「昨年6月、特殊詐欺の関連で逮捕された宮沢はその後、京都事件のロレックスを運んだ盗品等運搬罪、今村に『ヨシダ』の偽名で犯罪収益を送金した組織犯罪処罰法違反の罪でも起訴された」(前出・記者)
冒頭の法廷で、検察は宮沢に7年6カ月の実刑と罰金70万円を求刑。判決公判は9月5日に行われる。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 2023年8月17日・24日号)

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