災害と軍艦島(端島炭坑、長崎市)の関わりに詳しい長崎大名誉教授、後藤恵之輔さん(81)の講演会が、福岡市中央区の九州学士会であった。「世界遺産『軍艦島』は台風と人間力との闘いの歴史」と題し、九州学士会・読書会が主催した。
軍艦島は、石炭の採掘を始めた1890年ごろから台風による影響を受け続けてきたという。1974年に炭鉱が閉山して島が無人となって以降は、大正から昭和初期に建てられた建物の劣化や護岸の損傷が拡大。91年には台風で護岸3カ所や映画館の跡が崩壊し、2020年には国内最古の鉄筋コンクリート造りアパートといわれる「30号棟」の一部が強風などで崩落した。
後藤名誉教授は、今後も懸念される台風被害について「(このままでは)やがて軍艦島は護岸も建物も海中に沈んで岩礁に戻るかもしれない。台風の歴史を知ることで今後の備えにつながる。世界にも類を見ない産業遺産を何とか未来永劫(えいごう)残したい」と訴えた。
福岡市の国史跡「元寇防塁(げんこうぼうるい)」の活用などに携わる同市職員、高島和也さん(28)は「史跡をどう残していくかという視点で、風向きや地形から予測をしながら防災していく話が勉強になった」と話していた。
軍艦島は、ピーク時の60年ごろには5000人以上が暮らし、2015年には世界遺産「明治日本の産業革命遺産」を構成する一つにも選ばれた。【長岡健太郎】