1923年の関東大震災後、流言を信じた日本人に虐殺された朝鮮人らを追悼する催しが2日、東京都墨田区の荒川河川敷で開かれた。20~40代の日本人や在日コリアンらによるグループ「百年(ペンニョン)」などが主催し、初めて実施。目撃証言や自分たちの思いを朗読し、差別にあらがう社会を誓った。
「子供たちは並べられて、親の見ている前で首をはねられた」「電柱に朝鮮人が縛られ、<なぐるなり、けるなり、どうぞ>と書いた立て札があった」。「百年」のメンバー16人は会場で、600人以上の参加者を前に虐殺の目撃証言を約30分かけて代わる代わる朗読。「100年で終わりではない。これからも関心を寄せて」。韓国から来日した犠牲者の遺族もマイクを握り訴えた。
荒川河川敷の近くには、独自の追悼式を82年から続けてきた市民グループ「ほうせんか」が設置した小さな追悼碑がある。若者らはそれぞれこの追悼碑を訪れ、「ほうせんか」のメンバーに「100年の節目は若者たちで追悼式を開いてほしい」と託されて「百年」を結成。約2年かけて準備を進めてきた。
メンバーが虐殺を知ったきっかけはさまざまだ。在日コリアン3世の鄭優希(チョンウヒ)さん(29)は幼い頃、祖父から聞かされた。遠い出来事のように感じていたが、大学生の時に追悼碑を訪れ、自分も虐殺現場を案内したいと思った。6月には現場を巡り、粘土製の小さな「追悼碑」を参加者がそれぞれ作るイベントを企画。「手を動かして追悼碑を作ることで自分の経験として残してほしかった」と語る。
大学職員の遠藤純一郎さん(29)は数年前に映像作品で虐殺を知った。「原爆のことはきのこ雲のようなイメージがあるが、虐殺は学校で習った記憶がない」。追悼式では証言朗読の企画を担当し、目撃者、被害者とさまざまな声を選び取った。メンバーの、こんな思いも「今を生きる人の証言」として朗読に盛り込んだ。「最近のトランスジェンダーに対するヘイト(憎悪)の話もそう。差別をする言論って本当に身近。差別にあらがう社会を作っていきたい」
追悼式を訪れた川崎市の女性(30)は「生々しい証言を聞き胸が痛かった。虐殺自体を否定する人もいるが、二度と事件を起こさないために関心を持って考えていきたい」と話していた。【南茂芽育】