9月1日、東京・港区は、来年度に区立中学校3年の全生徒、約760人の修学旅行先を、「シンガポール」にすることを発表。
この決定に、今、賛否の声が上がっています。
港区在住の男性: 僕なんか京都とか奈良とか行ったわけですけど、昔の神社、仏閣とかいろんな歴史を学ぶっていう意味もあるので、(海外旅行は)それはそれで楽しいと思うんですけど、歴史とかそういうことを考えると、まずは国内から。中学生ぐらいだったらいいのかなと思います。
娘が公立小学校1年生の母親(30代): いま(娘が)公立の小学校の1年生で、中学受験をするかまさに考えていたので、選択肢として。区立の中学もこれから語学教育に力を入れていくみたいだし、(区立進学の)可能性がかなり強くなったと思う。ニュースが出たので夫にすぐ(記事を)転送したら読んで、「じゃあもう中学も区立で」って言っていました。
実は港区は、2007年から国際教育に力を入れており、その取り組みの集大成として、修学旅行先を海外にしたといます。シンガポールにした理由について港区の担当者によると「英語を活用した体験ができ、時差が少なく治安が安定している」などがあったそうです。
区民の中でも賛否
気になるのは旅行の費用。
港区によると、各家庭に求める負担は、これまで京都や奈良への修学旅行でかかっていた約7万円以内に収めるとのこと。それを超える部分は区が負担する考えで、生徒1人当たり約50万円が税金でまかなわれることになります。
そこで、「めざまし8」は港区の住民を取材。税金が使われることについて、どう受け止めているのでしょうか。
3歳の息子の母親: 子供たちに使ってくれるのはいいかな。親としてはありがたいし、支払っている方としても子供たちに使われるのならいいと思います。
港区在住の女性: 区立中学に進まれる方は、以前に比べて少なくなっているようなことは耳にするので。そういった点でも税金の使い方としてはいいのかなと思う。
賛成の声が上がる一方で、子供を私立中学に通わせている保護者からはこんな意見が。
息子が私立中学1年生の父親(60代): それは同様に私立の学校に行っている子供に対しても、同じような支給があれば納得できるって話ですね。親の収入に従って、子供の修学旅行の公費負担を「段階的に変える」というのがあれば、それは別に公平さを保つことになるから、これは賛成だと思います。
費用の負担について公平であるべきだという意見の一方で、「気にしない」という人も。
息子が私立中学1年生の父親: 先進的な試みなんじゃないかと思って、特にネガティブではなくて。予算とかうまくやりくりできるのであれば、別にいいのではないかと思います。
私立中学1年生の息子: そんなに気をとめていないですね。中学受験をして入った学校なので、ネガティブには思っていません。
港区の取り組みについて教育評論家の石川幸夫氏は、「異文化にふれ合うことは、非常に意味のあること。一方で、自治体の違いで修学旅行先に差が出てしまうことは、地域間格差や子供が家庭に対し劣等感をいだく恐れもある」と話しています。
「平等さ」「経験」中学教育に求めるものとは
港区のすべての区立中学校で実施される「海外修学旅行」。めざまし8のスタジオゲスト陣はどう見たのでしょうか。
MC谷原章介: 港区の公立の学校のことなので、通っているのは港区民ですよね。港区民が納めた税金を港区民が使うのは基本賛成でいいと思うんですけど、3泊5日って短いですよね。どれだけ現地の方に触れ合えるカリキュラムが作れるのかとちょっと疑問ですが、立岩さんどう思いますか?
立岩陽一郎氏: 税金を使って子供たちをというのは、私は賛成。ただ、修学旅行をやっても多分意味はないです。みんなで集団で、日本の学校の感覚のそのままで行くわけですよ。多分英語を使うって、お店へ行って「How much?」くらいですよ。そうではなく、海外に行く意味というのは、空港を出てそこでどういう手続きをして、現地へ行ったときに現地の人たちとどう接するか。ここで初めて海外を知るわけです。だから、集団で行って学校の先生が引率していって、私はあまり費用対効果は無いと思います。例えば少人数で行くような形なら賛成だけど。
サヘル・ローズ氏: 確かにこの年齢で、はたして海外に行くことでこの経験をかみしめることができるだろうかと考えたら、多分この(税金の)使い方ってもっと使わなくてはいけないところが他にたくさんあると思います。私は港区の中学校に通っていたんですけど、修学旅行のお金ってお母さんが出すのが厳しかったので、行かない選択をした。他にも(同じ選択をした)同級生もいた。みんなが払えるかといったらそうじゃない。実は、生活等で工面することが厳しい方もいらっしゃると思うので、これって本当にみんなが平等になれるのかなと。この学校の中でも、という不安はあります。
慎重論が出る一方で、子供たちに「経験」をさせることは大切だという意見も。
武井壮氏: 中学校くらいに修学旅行に行った思い出はありますけど、そんなに何かを学びに行くぞという気持ちでは行っていなかったと思うんです。思い出作りも一つの目的だと思うし、さらに海外に行って日本にいたら経験できないことを、3泊5日だけでも、経験するって事も、子供たちにはいい情操教育かなと思ったりもします。区民の方が納得していて、自治体がやっていることなのでそれを評価して、こういう方策が続くならいいし、まかり通らないとなれば変わっていくのだろうし、ちょっとひいた感じで見ています。
風間晋氏: 中学生の時に、シンガポールに行きたかったなと思いますね。50年前ですけど。 初めて自分がシンガポールに行ったときに、マーライオンって小さいなと思ったんです。見ると聞くとは大違いと言うけれど、今ネットや生成AIの時代だからこそ、余計に自分で行って直接経験するというのは大切になっているのではないかなと。
立岩陽一郎氏: マーライオン小さいと思ってなんだったんですか?風間さんの人生に影響を?
風間晋氏: いやそれだけだったんですが。でもやはり中学生の時に、自分が全然知らない世界を見ることができたというだけで、人生が変わっていたかもしれないと思いますけどね。
武井壮氏: どうせなら、シリコンバレーに行ってベンチャーのプレゼンを見させてあげたりとか、インド工科大学とか行って、最先端のITの授業とか、それがどういうふうに行われて、世界のIT業界がリードされているのかとか、そういうのをはっと見られる。日本の学校で勉強しているのと全然違うなと感じられるものを感じさせてあげられたらなと。
立岩陽一郎氏: だから、せっかく行くならもっと現地に入っていってほしいですよね。短い期間だったとしてもね。スケジュール通りとかはやめて、子供たちにシンガポールを見てこいと。それくらいやればいいですよ。どんどん税金を使ってもらって。
(めざまし8 9月5日放送)