首相襲撃、黙秘貫く…全容解明は法廷へ 木村容疑者起訴

岸田文雄首相の演説会場に4月、爆発物が投げ込まれた事件で、和歌山地検は6日、首相らに対する殺人未遂や爆発物取締罰則違反などの罪で、無職の木村隆二容疑者(24)を起訴した。
木村被告は逮捕後、一貫して黙秘しており、事件の動機は明らかになっていないが、パイプ爆弾の殺傷能力や高い計画性から首相らに対する殺意を認定したとみられる。一国の宰相らを標的にした凶行の背景に何があったのか。全容解明の舞台は法廷に移る。
和歌山地検の飯浜岳次席検事は6日夕、記者団の取材に応じ、木村被告の起訴内容を説明した。ただ、被告の認否や殺意を認定した理由などは明らかにしなかった。
捜査関係者などによると、パイプ爆弾の一部が現場から約40メートル離れた倉庫近くで見つかり、さらに約20メートル先のコンテナに蓋のような破片が刺さっていたことが判明。和歌山県警は破片の飛散状況のほか、不発のまま現場に残った爆弾の複製品から再現実験して威力を調べた結果、殺傷能力があることを確認した。
事件では、聴衆と警察官の計2人が負傷。破片が頭部を直撃すれば死者が出る「現実的な危険性」もあり、検察当局は、被告の供述が得られない中でも、実態に即して殺人未遂罪での立件は欠かせないと判断した。
木村被告は、自作のパイプ爆弾2本を会場に持ち込み、刃渡り約13センチの包丁を所持。事件前には自民党のホームページを繰り返し閲覧し、入念に準備を進めていた疑いが強い。また、爆発物の製造方法もインターネットなどで調べていたとみられ、刑事事件に詳しい元大阪地検検事の亀井正貴弁護士は「威力を認識していたことは明らかで、明確な殺意に基づく計画的犯行だったといえる」とみる。
検察側は今回、不特定多数への被害が想定されるパイプ爆弾を使い、首相の演説会場を襲撃していることから、選挙妨害の意図が推認できるとも判断。安倍晋三元首相襲撃事件の山上徹也被告(42)=殺人罪などで起訴=のケースとは異なり、公選法違反罪でも起訴に踏み切った。
山上被告の場合、母親が入信する旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)への恨みから、つながりのあると考えた安倍氏個人を自作銃で狙っていた。元裁判官で法政大法科大学院の水野智幸教授は、木村被告の場合は、演説会や選挙自体の妨害を意図した行為だったと客観的にとらえることが可能だとし、「選挙を妨害した悪質性は高い」と指摘した。
木村被告が黙秘を続ける中、捜査当局が関心を寄せるのが、被告が国を相手に起こした訴訟だ。選挙制度の年齢制限に強い不満を抱いていたとされ、自ら訴訟資料を作成している点などから強い執着もうかがえる。訴訟が首相襲撃の動機になったのか-。今後の公判では被告が何を語るかが焦点となりそうだ。

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