「低い安全意識、ひどすぎる」 知床観光船事故、最終報告で遺族憤り

北海道・知床半島沖で観光船「KAZU Ⅰ(カズワン)」が沈没した事故で、運輸安全委員会は7日の最終報告書公表を前にした6日、オンラインで乗客の家族らに内容を説明した。
約2時間にわたる説明を聞いた道内の行方不明者家族の男性は「私たちが抱いていた疑問や事故原因について言及されており、責任の所在がはっきりしたのではないか」と評価した。
報告書はカズワンの運航会社「知床遊覧船」のずさんな管理体制を明らかにしている。男性は、同社の桂田精一社長(60)について「知床の海や安全運航に関する知識が不足していただけでなく、人の命を預かっているという安全意識も低い。ひどすぎる」と憤りをあらわにした。ハッチに不具合があり海水が流入して沈没に至ったとの記載もあり、国の代行機関としてカズワンを検査した日本小型船舶検査機構(JCI)に対しても「十分な点検をしなかった責任がある」と批判した。
事故から1年4カ月あまり。男性はいまだ見つからない家族について「見つかってほしいが、見つかったとしても現実を受け入れられるか分からない。どこかで生きていると思いたい」と祈るように言った。
9月上旬、秋の気配が漂い始めた知床には、沈没事故や新型コロナウイルスの影響で激減した観光客が再び戻ってきていた。
報告書は「同業者全体としても運航基準の内容を正確に理解し順守するという意識が薄かった可能性がある」と指摘している。
観光船を運航する4社でつくる「知床小型観光船協議会」は事故後、複数社で運航の判断を協議して判断が分かれた場合は欠航することなどを決めた。協議会の神尾昇勝(のりかつ)会長は、事故前より慎重な運航判断をするようになったといい、「運休の割合は増えた。安全を最優先にした取り組みをしていくことが信頼回復につながる。時間はかかるが徹底して継続していきたい」と強調した。
国土交通省は4月に打ち切った乗客家族らを対象としたオンラインの定例説明会を今月5日に再開した。
国交省によると、5月下旬に乗客家族から再開を求める声があり、原則として月1回の頻度で開催する。乗客家族同士のコミュニケーションの場としたり、国交省が他の事故の遺族の活動の取り組みを報告したりするという。【山田豊、本多竹志】

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