〈 「ボコって血まみれにした人の写真がスマホに…」同棲相手(24)を暴行死させた全身タトゥー男(22)が半殺しにした元同僚の告白「250万円を奪われた上に髪を掴んで殴る、蹴る、目には真っ青なアザが…」 〉から続く
その男は自宅にいる時は常に上半身裸で過ごしていた。右胸に刻まれているタトゥーをよく見ると、日付らしき数字である。やや斜めの筆記体。トライバル(部族)風の装飾が施されていた。
男はそれを見せびらかすと、こう言い放った。
「これは俺が先輩を殺した日。それを忘れないように彫ってあるんだ」
元同僚のAさんに向かって得意げにこう語る男は、9月24日に逮捕された小松魁人容疑者(22)だ。
◇◇◇
9月10日に千葉県柏市の住宅で交際していた齋藤瑞希さん(24)の顔面を約20分ほど殴りつけた小松。それから約2週間後の9月23日、小松は「女性が室内で倒れ、意識がない」と119番通報。駆けつけた警察に傷害の容疑で逮捕されたが、齋藤さんはその後、搬送先の病院で亡くなった。小松はキャバクラのボーイとして働いており、キャバ嬢だった齋藤さんと同じ店舗で勤務していたこともあったという。
「今後は傷害致死での立件も視野に捜査される見通しです」(社会部記者)
小松が自慢したおぞましい“過去の武勇伝”
「週刊文春」はこれまで2度にわたり、小松の元同僚だというA氏の告白を報じてきた。茨城県龍ケ崎市のパチンコ店に勤務していた時に度々暴力トラブルを起こしていたこと、250万円を騙し取られた末に殴る蹴るの暴行を受けたこと……。「小松の凶悪さについて多くの人に知ってほしい」とA氏は意を決して自身の体験を明かした。
だが、小松の過去の蛮行は“暴行”だけではなかった。A氏は小松自身から、おぞましい“過去の武勇伝”を自慢されていたのだ。
第二弾の記事 で報じた“金銭暴行トラブル”で縁が切れるまで、A氏は小松にとって数少ない心を許した存在だった。
そんな小松はパチンコ店で勤務していたある日、A氏に向かって唐突にこう切り出したという。
「俺、13歳の頃に先輩をボコボコにしたら死んじゃって、3年ほど少年院に入っていたことがあるんだよね。宇都宮にいた頃、仲の良かった先輩が調子に乗っていてムカついた。先輩はその時、脚の骨を折って松葉づえをついていたから、それを奪ってボコボコにしてやったんだ」
当初は嘘の武勇伝を語っているだけだと思っていたA氏。しかし、
「小松と一緒に過ごしているうちに、どうもそうとは言い切れない部分があるなと思い始めたのです」(A氏)
「本当にこいつは人を殺したんだ」と背筋が寒くなった
1つが、小松に誘われて行ったドライブだ。2021年2月頃、A氏は小松から「俺が入っていた少年院に行きたいんだよね」と持ちかけられる。
「群馬県前橋市の赤城少年院に車で一緒に行きました。小松は最初、栃木県さくら市の喜連川少年院にいたそうですが、途中で移ったと話していた。少年院に着くと、教官とも話をしていたので、入所していたこと自体は間違いないんだろうなと思いました」(A氏)
そして2つ目が、冒頭の胸に刻み込まれた“日付タトゥー”だ。「俺が先輩を殺した日」を自慢げに身体に彫り込む神経にA氏は背筋が寒くなったという。
「本当にこいつは人を殺したんだ。こいつならばやりかねないタトゥーを見せられて疑念は確信に変わりました」(A氏)
小松は本当に少年時代に事件を起こしているのか。当時の新聞を調べると、次の記事があった。
〈宇都宮市の県営住宅の一室で1月、県立高校1年の○○さん(16、※原文では実名)が遺体で見つかった事件で、宇都宮家裁は25日、傷害致死の非行事実で送致されていた県内の中学2年の男子生徒(14、※事件当日13歳)について初等少年院送致とする保護処分決定をした。(中略)決定によると、○○さんの態度に腹を立てた男子生徒は1月26日午後2時半頃、○○さんの自宅の県営住宅の一室で、顔を手で数回殴った後、金属製の松葉づえで頭や腹などを複数回殴打し、死なせた(以下略)〉(読売新聞2015年3月26日東京朝刊)
記事にある日付をA氏に確認すると、「間違いない。タトゥーの数字はこの日付です」と語った。
小松はどのような少年だったのか。中学校時代の同級生が証言する。
中学校の同級生が語った小松の粗暴な一面
「怒っていなければ気さくで話しやすい奴でした。ただ、嫌いな先生や、叱ってくる先生の胸倉を掴んで殴りかかったり、先生の手をシャーペンで刺すなど粗暴な一面もあった。中学2年生の頃から急に学校に来なくなり、『小松が人を殺したらしい』という噂が一気に出回りました」
前出の新聞記事によると、少年院への送致を決定した宇都宮家裁の裁判長は小松について、こう断じている。
〈衝動統制力の欠如など深刻な問題点をうかがわせる〉〈時間をかけて専門家による系統的な矯正教育などを施す必要がある〉
その後、小松は社会復帰し、成人を迎えた。しかし、A氏はこう言う。
「小松は人を死なせたことを一切反省せず、まったく更生していません」
なぜそう言い切れるのか。実は小松はある時、A氏に被害者遺族宛の手紙の下書きを見せてきたことがある。
〈かっとなってやってしまった。殺すつもりはなかったし、僕は一生償っていきます〉
一見、誠意を持って反省しているように見える文面だ。しかし、小松はA氏にこう言ったという。
「こうやって反省の手紙を書くことで、今後の遺族からの見られ方が変わる。印象が良くなるんだよ」
そして、こう話していたという。
「俺に楯突くとこうなるんだ」「人生3年、棒に振っちゃったよ」「でも、結局そういうことをやってもすぐ(少年院から)出てこれるから」
A氏は絶句したという。
「人を1人死なせているのに反省どころか開き直っている。小松は殺人自体を“悪いこと”だと思っています。でもその理由は、他者の命を奪ってしまうからではありません。『人を殺したら捕まって自分が痛い目に遭うからやらない方がいい』と話していた。倫理観のカケラもない。更生を望めるような人間ではないのです」(A氏)
小松が事件直後に目撃されていた“ある場所”
こうして野に放たれ、2人目の命を奪った小松。実は、事件の直前に“ある場所”で目撃されていた。小松が足繁く通っていた茨城県内のタトゥースタジオである。最後に訪れたのは9月12日。齋藤さんに暴行を加えた後だった。
店主が語る。
「小松くんは1年前くらいからだいたい月1で来ていました。いつも彼女を連れてきて施術中は隣室のソファーで待たせているんです。側から見れば仲の良さそうな普通のカップル。9月12日に来た時は確か1人でしたね。でも特段変わった様子もなくいつも通りでした。次の予約は9月25日。でもその日、ニュースを見ると彼が逮捕されていて、驚きましたね」
逮捕時に目立っていたのは首のタトゥー。右胸に「先輩を殺した日」を彫り込んでいることは前述した通りだ。だが、小松はそれ以外にも全身にタトゥーを入れていた。
「確か左腕にはダルマの和彫り。リアルな鳳凰や鯉も入っていました。今時の若い子なのでお洒落な感じですよ。絵柄を気に入ってくれていて、完成するといつも喜んでいました」(同前)
A氏が語る。
「今回の事件の一報を聞いた時、自分が暴行を受けた時に警察に相談していたら……と後悔しました。そうしていれば、若い女性の命が奪われることはなかったかもしれない。だから今回、覚悟を決めて語ることにしました。小松の悪事が明るみに出て、あの凶悪な人間性を世間が理解してくれればと思っています」
更生せず社会に放たれ、2人目の命を奪い取った“鬼畜”を司直はどう裁くのだろうか。
◆◆◆
「週刊文春」では、今回の事件について情報を募集しています。文春リークスまで情報をお寄せください。
文春リークス: https://bunshun.jp/list/leaks
(「週刊文春」編集部/週刊文春Webオリジナル)