「初の女性首相」レースに“ダークホース”が浮上した。「目立たないが安定感、行政手腕ともに女性議員の中でピカイチ」(自民党ベテラン議員)と注目されているのが、岸田派の上川陽子・外相だ。
キャリアは申し分ない。東京大学教養学部卒業後、ハーバード大学で政治行政学修士号を取得、米国では上院議員の政策スタッフも務めた。2000年の総選挙で初当選して現在当選7回。この間、少子化担当相を2期、法相を5期務めるなど大臣経験豊富で、安倍政権の法相時代にはオウム真理教の教祖・麻原彰晃ら16人の死刑執行にサインしたことで知られる。
「これまで多くの政治家を見てきましたが、総理に相応しい人は上川さんしかいないと思う」
そう語るのは上川氏が初入閣した第1次安倍内閣で事務方トップの官房副長官を務めた的場順三氏(元大蔵官僚)だ。彼女を総理適格者と考える大きな理由は法相時代に死刑執行を命じた時の姿勢だという。
「歴代法相の中には死刑執行を躊躇する人が多く、『(死刑は)私の世界観とは違う』と言う人までいた。その点、私が仕えた後藤田正晴さん(元副総理兼法相)は、死刑執行停止は『法治国家として望ましくない』と言って法相として内容を精査、確認し、納得したうえで執行を命じた。それが責任ある政治家の態度です。私の知る限り、後藤田さん以降、ご自身で深く考え、判断された大臣は上川さんしかいない」
的場氏が続ける。
「リーダーは周りの協力がなければ務まらない。政治家には、『オレがオレが』と目立ちたがって周囲と軋轢を生む人も多いが、そうした人は周囲も補佐しにくい。上川さんは多くの役職をこなす中で軋轢も生まず、キッチリ仕事をこなしてきた。それは総理大臣の重要な資質です。
女性総理候補には小渕優子さんも名前が挙がっているが、それは父の小渕恵三元総理の存在が大きい。世襲政治家には先代からの政治家同士の確執や怨念まで継承せざるを得ないところがあるが、世襲政治家ではない上川さんにはそうしたしがらみもない」
並み居るライバルだけではなく、岸田首相まで“ごぼう抜き”するかもしれない。
※週刊ポスト2023年10月20日号