東証プライム上場のコンサルティング会社「アイ・アールジャパンホールディングス」(IRJHD、東京)株のインサイダー取引事件で、金融商品取引法違反(取引推奨)に問われた同社元代表取締役副社長・栗尾拓滋被告(57)の初公判が23日、東京地裁(世森ユキコ裁判長)であり、栗尾被告は起訴事実を認めた。検察側は、栗尾被告が交際相手の女性2人に同社株の売却を勧め、計約2200万円分の損失を回避させていたと主張した。
検察側は「市場の公正性や投資家の信頼を著しく害した」として懲役1年6月を求刑。弁護側は執行猶予付き判決を求め、結審した。判決は10月5日。
起訴状によると、栗尾被告は在任中の2021年3月30日頃に同社が業績予想を下方修正するとの重要事実を把握した上で、公表前の同年4月4日頃~15日頃、女性2人に損失回避目的で株の売却を勧めたとされる。取引推奨は、企業の重要事実を把握した幹部らが他人に利益を得させるなどの目的で株取引を勧める行為。取引した側は重要事実を知らされていなければ処罰されない。
検察側の冒頭陳述によると、栗尾被告は社内の会議で、同年3月期の売上高の予想について、事前発表の97億円から10%以上減少するとの重要事実を把握。下方修正が公表される前日の同年4月15日夜、2人に会ったり、LINE(ライン)で連絡したりするなどし、「うちの株、下がるから売った方がいい」「あしたの朝、早く売って」と伝えた。同社が下方修正を公表した翌営業日、株価は約3000円下落した。2人は栗尾被告の勧めに従って公表前に計1万1200株を計約1億8000万円で売り抜け、計約2200万円分の損失を避けられたという。
検察側は、栗尾被告は入社した13年4月以降、業務で知った内部情報などを基に、複数の個別銘柄の取引を2人に勧めていたとも指摘。自身も他人名義の口座などを使い、取引を行っていたと主張した。
栗尾被告は被告人質問で、「市場の公正を害してしまい、深くおわびする」と謝罪した。個別銘柄の取引についても「許されるものではなく、大変申し訳なく思っている」と述べた。