長沢芦雪の大作「大黒天図」、半世紀ぶり発見 京都で10月公開

江戸中期の京都で活躍した絵師、長沢芦雪(ろせつ)(1754~99年)の代表作の一つ「大黒天図」が半世紀ぶりに見つかったと、福田美術館(京都市右京区)が8月29日、発表した。縦164センチ、横98センチの画面いっぱいに、鏡餅の前でどっかりと座る大黒天の姿を大胆に描いた大作で、10月18日から同館で公開される。
芦雪は、伝統的な様式絵画に対し、写生を基本とした清新な表現を打ち立てた円山応挙(1733~95年)の門弟の一人。美術史の大家、辻惟雄さんが、近世絵画研究に大きな影響を与えた1970年の著作「奇想の系譜」で紹介して注目されるようになった。2000年以降、大規模な芦雪展が各地で開かれるようになったが、辻さんが同著で図版とともに取り上げた「大黒天図」は、1971年に東京での展覧会に出品されたのを最後に所在が分からなくなっていた。
福田美術館の岡田秀之学芸課長によると、70年当時は和歌山県田辺市の旧家が所蔵。昨夏、大阪の美術商から購入した。紙の折れや汚れが目立ったため修理したという。
芦雪は、33歳だった1786年10月ごろから翌年2月まで、多忙だった応挙の名代として現在の和歌山県南部に赴き、さまざまな依頼に応えて絵筆を執り、代表作となるふすま絵や掛け軸を数多く残した。「大黒天図」も南紀で描いたと見られ、南紀での他の作品の署名の筆跡や印章が一致した。画紙の大きさは最大級という。
岡田さんは「芦雪の人物画や仏画はほとんど残っていない。動物画で評価が高いが、芦雪の画業全体を研究するうえで重要な作品」と話す。大黒天の膝や鏡餅の周囲には小さなネズミが10匹以上描かれており、大胆な構図で見る人を驚かせつつ、画面に近づいても細部で楽しませる仕掛けとなっている。
展示は、「ゼロからわかる江戸絵画」と題した展覧会(24年1月8日まで)で。【南陽子】

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