36人が犠牲になった2019年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などで起訴された青葉真司被告(45)の第2回公判が6日、京都地裁(増田啓祐裁判長)で開かれた。検察側は証拠調べで、青葉被告が「盗用」と主張している京アニ作品の該当シーンを法廷で上映した。類似性がなく、京アニ側の盗用がなかったことを立証する目的とみられる。
検察側は、青葉被告が盗用と主張している京アニの「ツルネ」「Free!」「けいおん!」の3作品の一場面を法廷で上映。対比させる形で、青葉被告の小説の記述内容を説明した。
「ツルネ」では、登場人物がスーパーで2割引きのシールが貼られた肉を見つけるシーンがある。青葉被告が京アニに応募した「リアリスティックウエポン」と題する小説には、ヒロインが5割引きの総菜を買いあさる場面があった。この部分だけを捉えて、青葉被告は「盗用」と主張しているとみられる。
青葉被告は京アニに小説2作品を応募し、17年に落選している。京アニは「自社作品と類似点はない」としている。青葉被告が盗用と主張する3作品のうち、少なくとも「けいおん!」は小説の応募前に公開されていた。
検察側は、こうした証拠を基に類似性を否定し、青葉被告の主張を「妄想」だとした上で、犯行の計画性などから完全刑事責任能力を立証していくとみられる。
公判では、検察側が青葉被告のスマホの閲覧履歴も説明。16年8月~19年3月、京アニ関連のサイトを2539回、京アニの女性監督関連を352回閲覧し、京アニに就職する方法を閲覧した形跡もあった。
青葉被告が救急搬送前に男性警察官とやり取りした音声記録も流された。「なんでやった」と聞く警察官に対し「パクられた」と答え、「何を」と問われると「小説」と声を荒らげた。
この日の証拠調べでは、青葉被告の母親と兄、妹の供述調書も読み上げられた。調書によると、青葉被告が小学3年生の時に両親が離婚。母親が家を出た後、父親と兄、妹と暮らした。きょうだいは父親から虐待を受け、青葉被告は中学校で不登校に。父親は1999年に亡くなった。
青葉被告は2006年、窃盗事件を起こして執行猶予つき有罪判決を受け、母親と再婚相手が住む茨城県内のアパートに身を寄せた。半年ほどで出て行ったが、住み込みの仕事が続かず、母親が生活を援助していた。
青葉被告は12年6月にコンビニ強盗事件を起こした。母親は事件後、青葉被告と会っていないという。