自民党内で衆院解散・総選挙の時期を巡り、様々な見方が浮上している。岸田内閣の支持率が低迷する中、早期解散には慎重論が強いが、今月予定される内閣改造・党役員人事の直後に踏み切るべきだとの声もある。党内には疑心が広がり、岸田首相の動きが注目されている。
「政権は安定している。政治に対する信頼が揺らいでいると思ったことはない」
自民の麻生副総裁は6日、東京都内の講演でこう述べ、現状の政権運営に問題はないとの考えを示した。
ただ、読売新聞社の世論調査では、岸田内閣の支持率は7、8月と2か月連続で内閣発足後最低の35%だった。解散・総選挙には不利とみられる状況で、「選挙であえて議席を減らす必要はない。支持率回復を待ち、解散は来年の党総裁選前後でいい」(中堅)というのが解散慎重派の声だ。内閣支持率が低迷したまま来年の総裁選を迎えれば、首相を交代させ、「新しい顔」で選挙に臨めばいいという思惑もうかがえる。
首相が政策課題の解決を加速させ、早期解散も視野に入れていると思われるのは、こうした党内の声を懸念しているためとみられる。
8月以降、物価高対策としてガソリン価格の負担軽減策や追加の経済対策の策定を打ち出したほか、福島第一原子力発電所の処理水海洋放出でも自身が先頭に立ち、風評被害の 払拭 に取り組んでいる。10月に始まる消費税のインボイス(適格請求書)制度を巡っては、事業者の不安を解消するため新たな支援策の準備も指示した。
首相は衆院解散時期について、「課題に正面から取り組み、結果を出していくうえで最も適切な時期を考える」と発言している。党内には、一連の対応を「解散に向けた環境整備」と見る向きがあり、経済対策の効果が表れる年末や、来年の通常国会の冒頭での解散を予想する声がある。小泉進次郎・元環境相は1日、「(首相は)チャンスがあれば解散を打ちたい気持ちは当然ある」と指摘した。
来週にも行われる内閣改造・党役員人事直後の解散を求める意見も一部にある。決断の先送りは解散時期の選択肢を狭め、不利を覚悟で戦う「追い込まれ解散」となる恐れがあるためだ。党幹部の一人は「今解散しなければ、岸田内閣はじり貧だ」と強調し、10月に召集される見通しの臨時国会の冒頭での解散を主張している。
早期解散論者の中には、自公連立政権に国民民主党を参加させ、有権者の期待を高めたうえで解散すべきだとの意見も出ている。党内には「改造と人事の内容で、早期解散するかどうかはある程度占える」(幹部)との声がある。