大手中華料理チェーン「餃子の王将」のフランチャイズ(FC)店舗のオーナーから激しい暴行を受けたり、暴言を吐かれて退社した20代後半の元店長が、近く警察に被害届を提出する意向であることがわかった。元店長A氏が「 週刊文春 」の取材に応じ、自身が受けた被害を明かした。
1967年、京都市・四条大宮で誕生した「餃子の王将」。1974年には「株式会社王将チェーン(現・株式会社王将フードサービス)」が設立され、〈早く、うまく、安く〉のモットーの下で急拡大。現在は全国に732店舗を構え、そのうち190がFC店舗だ。
「バカ、アホ」の言葉は当たり前
被害を告発したのは、山口県下関市にあるFC店舗「餃子の王将 下関長府マリン店」で2020年12月まで店長を務めていたA氏。2016年9月から約4年間にわたって勤務していたが、同店のオーナーX氏による恒常的な暴言、暴力、パワハラに苦しんだ末に退職に追い込まれた。「バカ、アホ」などの言葉は当たり前。イジメのようなこともあったという。
A氏が語る。
「冷凍肉の解凍後に出る血の混ざった水をジュースと言って飲まされたこともあります。また、私が飲みかけのペットボトルを灰皿代わりにして、タバコの吸い殻が入ったまま口にしてしまったこともある」
「肩にめり込むほど強く殴られ…」
とりわけA氏が悩み苦しんだのが、X氏の暴力だった。
「餃子返し(餃子用ヘラ)の鋭利な金属部分が肩にめり込むほど強く殴られました」(同前)
「週刊文春」はこの時の写真を確認。餃子返しで殴られた肩の皮膚には、めり込んだ痕があり赤黒く腫れ上がっている。
A氏は2020年12月に退社し、労働審判を申し立てた。結局、未払い残業代として450万円が支払われることになったが、「(X氏による)数々の暴行は一切認めなかった」(同前)という。また、A氏は餃子の王将を運営する「王将フードサービス」にも調査と事案の公表を求めたが、「お客様の混乱を防ぐため公表するつもりはない」と断られたという。
「週刊文春」の記者はX氏を直撃したが、「あっ、そういうことでしたら、文書でお願いできますか」と語るのみ。その後、改めて店舗に質問状を送ると、締め切り期限を過ぎた後にX氏本人からメールで次のような回答があった。
「お問い合わせの内容は、2021年11月、労働審判手続にて、審判官をはじめとする労働審判委員会による審理の結果、調停成立して解決しており、内容の詳細については口外を控えさせていただきます。なお、私がご質問の暴行、暴言等の行為を行った事実はありませんので、事実と異なる報道をなさることのないよう、お願い申し上げます」
王将フードサービスに聞いた。
X氏によるA氏への暴行や暴言などについて事実関係を確認すると、「A氏から陳情を受けた後、当該店舗の従業員及びオーナーに対し、個別にヒアリングを実施いたしましたが、事実は確認されませんでした」と回答。また、事案を公表しない理由については、「FC本部による事案の公表の是非は、事案内容や、他のお客様への影響の有無、店舗営業への影響の有無等に鑑みて、事案毎に慎重に判断する必要がございます。当事者間にて然るべき手続きを経て解決された本件につき、事案公表を行うことは、FC店の営業を妨害することにもなりかねませんので、現時点では本件を公表するつもりはございません」とした。
現在配信中の「 週刊文春電子版 」では、「餃子の王将 下関長府マリン店」で起きた暴言・暴行・パワハラ事件について、A氏の告発を報じている。地元の名家出身だというオーナーX氏の人物像、A氏が受けた被害の全容、王将フードサービスの釈明などを、多数の写真やX氏の「暴言音声」などと共に配信している。
※X氏から締切期限を過ぎた後に回答が寄せられたため、追記しています(10月9日15時30分)。
(「週刊文春」編集部/週刊文春 電子版オリジナル)