安倍晋三内閣が2017年、森友・加計学園問題を追及する野党の臨時国会召集要求に約3カ月応じなかったのは憲法53条に違反するとして、野党議員らが国に賠償などを求めた3件の訴訟の上告審判決が12日、最高裁第3小法廷であり、長嶺安政裁判長はいずれも議員側の上告を棄却した。議員側敗訴が確定した。裁判官5人中4人の多数意見で、1人は反対意見を付けた。
憲法53条は、衆参いずれかの総議員の4分の1以上から要求があれば内閣は臨時国会を召集しなければならないと定めているが、期間は明記されていない。同条の解釈について第3小法廷は、内閣には召集義務があるとしつつ「個々の議員の召集要求の権利を保障したものではない」との初判断を示した。
両院の野党は17年6月、臨時国会召集を要求。召集は98日後の9月28日で、冒頭で衆院を解散したため審議は行われず、議員らが東京、岡山、那覇各地裁に提訴した。
第3小法廷は、議員の権利は召集が遅れたことで侵害されるとは言えないと指摘し、「国家賠償法に基づく損害賠償は請求できない」と結論付けた。内閣の対応の違憲性は判断しなかった。
学者出身の宇賀克也裁判官は、反対意見で「要求があれば内閣は20日以内に召集する義務がある」との解釈を示した。
3訴訟の一、二審は、議員個人が召集を要求する権利を有しているとは言えないとして、議員側の請求を退けた。
[時事通信社]