警視庁は11日までに、東京・池袋で電動キックボードに乗り歩行者に大ケガを負わせ逃走したとして、23歳の女を道交法違反(ひき逃げ)などの疑いで逮捕。また、大阪府警も同日、7月に電動キックボードを飲酒した状態で運転して事故を起こした会社役員の男性を道交法違反(酒気帯び運転)の疑いで書類送検した。今年7月の改正道交法施行で一部の電動キックボードは運転免許が不要になったが、一方で増える悪質な事故・違反が問題視されている。
電動キックボードに関する違反・事故が相次いでいる。警察庁は今年7月の電動キックボードにおける検挙件数とその内訳を発表。それによると検挙件数は全国で406件で、信号無視違反が最多の187件、禁じられた場所を走る通行区分違反が151件、一時不停止違反が35件などとなっており、酒気帯び運転は2件あった。
以前は電動キックボードに乗るには運転免許を必要とし、ヘルメットの着用も義務で車道のみの走行だったが、改正道交法施行により最高時速20キロまでの車両は新区分の特定小型原動機付自転車とし、16歳以上であれば運転免許は不要で、ヘルメットの着用も自転車と同じ努力義務に緩和。さらに時速6キロに速度制限するモードで歩道も走行することが可能になった。なお、自賠責保険の加入、ナンバープレートの取得は変わらず義務となっている。
まさに“自転車並み”の乗り物となった電動キックボード。シェアサービスも活性化し、最近は東京中で目にするようになっている。
一方で悪質な事故・違反も相次ぐ事態に…。池袋のひき逃げ事件を起こした女は違反となる時速10キロで歩道を走行していたとみられる。大阪の件のように、酒気帯び運転して検挙される例も報告されている。
現在は自転車の違反者にも反則金を納める「青切符」の導入が検討されている時代。一部の電動キックボードとはいえ、規制緩和されたことを疑問視する人は多い。弁護士法人・響の古藤由佳弁護士は「電動キックボードといっても出力によってさまざま。これらを一律の法で縛ってしまうと、自転車に近いものは過重な規制になって利便性が損なわれてしまう。そこで一部に関して規制緩和を行ったのでは」と見解を示す。
近年はSDGs(持続可能な開発目標)が世界共通のキーワードとなり、今後、ますます電動キックボードのような“ちょい乗り”に適した電動モビリティの活用が進むとみられている。それだけにより利用しやすい環境を整えようと、規制緩和が行われた可能性はある。
しかし、一方で規制緩和早々に事故・違反が相次いでいるのは事実だ。何より問題なのが電動キックボード運転者の意識で、違反者のなかには「自転車と同じだと思った」と話す人も多く、改正道交法を守る以前に内容を理解していない人が多いとみられる。警察庁のアナウンスに問題があるという声もあるが――。
「正直、これだけの違反者がいるのなら、周知が不十分と言わざるを得ない。一方で、警察が取り締まる立場から言うのも限界がある。そもそも改正道交法について詳しく書いてある警察庁のサイトを見る人って、どれくらいいるかという問題がある。一方でシェアサービス業者は、もう少し利用者に周知徹底する努力があってもいいのでは」(同)
古藤弁護士によれば、今後も重大な事故・違反が続けば規制緩和から規制強化に逆戻りする可能性もあるという。今の状況が続けば電動キックボードの利用者にはね返ってくる可能性があることは理解しておきたい。