初入閣は11人、過去最多に並ぶ5人の女性閣僚を引っさげ、第2次岸田再改造内閣が発足した。刷新感を打ち出し、政権浮揚を図ろうとする岸田文雄・首相だが、その視線はすでに「解散」へと狙いを定めている――。
選挙の顔は小渕優子
内閣改造直後から自民党内には「やはり岸田総理は解散・総選挙をやるつもりだ」(ベテラン議員)との受け止めが広がり、再び解散風が強まっている。
新内閣・党役員人事が明らかに総選挙を意識した布陣だったからだ。首相は人事ではまず処遇が注目されていたスキャンダル渦中の最側近、木原誠二・官房副長官を交代させた。
「木原さんは総理にとって唯一無二の相談相手だけに本音は留任させたかったのだが、いま不祥事を政権に波及させるわけにはいかないから泣いて馬謖を斬った」(官邸官僚の1人)
そのうえで、選挙の指揮を執る自民党選対委員長に小渕優子・元経産相を抜擢した。「女性登用」を掲げる首相は当初、小渕氏を重要閣僚で処遇すると見られていたが、あえて党4役の一角に据えて選挙の顔にした。政治ジャーナリスト・野上忠興氏は狙いをこう見る。
「小渕氏は経産相時代のドリル事件【※注】と呼ばれる政治資金規正法違反事件について説明責任を果たしていない。大臣にすれば野党から国会で追及されるのは間違いないでしょう。そうなればせっかくの目玉人事が逆効果だが、選対委員長なら国会答弁も定例会見もないから追及をかわせる。
自民党はすでに衆院の区割り変更に伴う公認候補の調整をすべて終えており、選対委員長の仕事は選挙戦で全国を回ること。そのポストに小渕氏を据えたというのは、全国を応援行脚させて女性票を獲得するのが狙い。解散・総選挙をにらんだ起用なのは間違いない」
【※注:ドリル事件/2014年10月、当時経済産業相だった小渕優子氏の政治団体が開催し、地元支援者が参加した観劇会をめぐり収支に不透明な点があることが報じられ、元秘書が政治資金規正法違反(虚偽記載・不記載)で有罪判決を受けた一連の報道で、東京地検特捜部が関係先を捜査する直前に、会計書類を保存したパソコンのハードディスクがドリルで破壊されていたことも注目を集めた】
岸田内閣はここにきて女性からの支持率が際立って低くなっていた。そのため、新内閣には上川陽子・外相、加藤鮎子・こども政策担当相、土屋品子・復興相、自見英子・地方創生相と留任する高市早苗・経済安保相を合わせて過去最多に並ぶ5人の女性大臣を起用して女性重視の姿勢をアピールして見せた。小渕氏とともに選挙応援にフル稼働させるための女性票獲得要員と見ていい。