36人が死亡し、32人が重軽傷を負った令和元年7月の京都アニメーション放火殺人事件で、殺人罪などに問われた青葉真司被告(45)の裁判員裁判の第8回公判が20日、京都地裁(増田啓祐裁判長)で開かれ、被害者参加制度を利用した遺族らによる直接の被告人質問が続いた。亡くなった女性=当時(22)=の母親は「娘は事件があった年に入社したばかりだった」と述べ、「あなたが盗作されたと主張する作品の制作の後に入った社員がいたことは考えなかったのか」と被告に疑問を投げかけた。
女性は事件のあった年に京アニに入社し、研修を受けて6月から第1スタジオに配属されたばかりだったという。
母親は、被告がガソリンをまいた際に近くにいたという3人の社員の位置関係を問うた。「そのうちの一人は私の娘の可能性がある」と述べ、「ガソリンに火をつけたのは娘を含めた全員に向けてですか」と聞くと、被告は「そうなります」と答えた。
静かな口調で「盗作したと主張する作品を制作した後に入社した社員も、焼け死んでいいと思ったのですか」と聞いた母親に対し、「そこまで考えが及びませんでした」と答えた被告。そこには自身の小説の内容などを語る際の饒舌(じょうぜつ)さはなかった。
一方で、その後に法廷に立った被害者参加の代理人弁護士が「放火殺人で人が死ぬと分かっている中で被害者のことは考えなかったのか」と尋ねると、被告が少しムッとした声で「逆に聞くが、京アニが(自身の)作品をパクったときには何か考えたのか」と反論する場面があった。
裁判官が「あなたが質問する場ではありません」と注意したが、被告は「パクりや『レイプ魔』と(被告自身が)言われたことに京アニは良心の呵責(かしゃく)はなく何も感じず、被害者としての立場だけ述べてどう思うのか」などとまくしたてた。