広島県福山市草戸町の明王院は19日、境内の国宝・五重塔に安置されている本尊「木造 弥勒菩薩坐像 」(県重要文化財)の内部から、折り畳まれた紙が見つかったと発表した。制作の経緯をつづった願文などが墨書されている可能性があり、正確な年代や仏師の特定に向けた手がかりになりそうだ。市などが今年度中に紙を取り出して調査する。
坐像は五重塔初層の 須弥壇 中央に置かれ、両脇の木造不動明王坐像、木造愛染明王坐像と共に、塔が建立された1348年頃に作られたとみられる。像高52・7センチの寄せ木造りで、宝冠を着け、体には金泥が塗られ、衣は細かな 截金 文様を施す。均整が取れ、柔和な表情をたたえ、県内の南北朝期仏像の代表といわれる。
腕などの部材が傷み、彩色も 剥落 した所があり、県市の補助事業で今年7月から修理を始めた。調査で後頭部の部材は外すことができ、中に紙が確認された。文字か図形のような墨書がわずかに見え、願文や経文、 印仏 (仏をかたどったスタンプ)の可能性があるという。
市文化振興課によると、平安期以降の指定文化財の仏像で、像内納入品が発見されるのは市内で数例しかない。明王院の片山悦子事務長(67)は「時空を超えて当時を伝えてくれる貴重な発見。誰が何のために作ったのか解明につながれば」と期待した。