京アニ被告人質問詳報 (13)「さっさと死ねというのか」被害者質問に感情的反応 京アニへの恨み、なお濃く

《京都アニメーション放火殺人事件の裁判員裁判第8回公判では、被害者遺族や代理人弁護士が青葉真司被告(45)に直接質問をぶつけた。犠牲になった一人一人には思いをはせず、あくまで「京アニ」という会社そのものを標的にしたという青葉被告。弁護人や検察官からの質問時とは異なり、「さっさと死んでくれということか」などと感情的な反応を見せることもあった》
被害者母「私は死亡した女性社員の母。もう一度確認したいことがある。(被告がガソリンをまいたとき)女性社員2人が『何、何』と言っていた」
被告「間違いございません」
被害者母「あなたの目に入った女性社員のうちの一人は私の娘の可能性が高い。ガソリンを一帯にまいたというが、女性社員2人にかかったかどうかは見ていないか」
被告「はい」
被害者母「周りの社員にしぶきがかかるくらい勢いよくまいた」
被告「おそらくかかったかと」
被害者母「『死ね』と言った相手は娘を含めた社員全体か」
被告「そうなります」
被害者母「焼死した娘は入社したばかりで(事件前月の)6月に第1スタジオに配属されたばかり。(青葉被告が盗作を主張する)アニメが制作された後に入社した。そういう社員のことは想定していなかったのか」
被告「すみません、そこまでは考えていませんでした」
《青葉被告はネットの匿名掲示板「2ちゃんねる」上で京アニの女性監督とやり取りをしていると思い込み、一方的に恋愛感情を抱くようになった。しかしその掲示板上で「女性監督」から「レイプ魔」と揶揄(やゆ)されたことで、自暴自棄になった旨を供述している。さらに京アニの作品コンクール「京アニ大賞」で自作小説を落選とされたのにもかかわらず、京アニや女性監督から、自身のアイデアをパクられた(盗まれた)ため、犯行に及んだと説明している》
被害者代理人「(犯行直前に)ためらいがあった、良心の呵責(かしゃく)があったと。被害者のことは全く考えていなかったのか」
被告「自分の10年間のことに頭がいっぱいで、被害者ということまで頭が回らなかった」
被害者代理人「良心の呵責とは何を意味するのか」
被告「これだけのことをするのだから、それなりの人が死ぬであろうと」
被害者代理人「被害者の立場は考えなかったのか」
被告「逆に聞くが、パクられたというときに何か考えたのか」
《代理人の質問に「逆に聞く」と質問で返した青葉被告。これまでの被告人質問では見せなかった反応だ》
裁判長「今、あなたは質問する立場ではない」
被告「『レイプ魔』と呼ばれ、そのことに対して京アニは、したことには何も感じないのか。被害者という立場だけ述べて、良心の呵責はなかったということでよろしいでしょうか」
《青葉被告の供述態度からは、むしろ自分も「被害者」なのだという印象が伝わってくる。京アニへの恨みがなお深いことをうかがわせる》
被害者代理人「盗作のことを知らなかった社員について『知る努力をしない時点で同罪』と言っておられましたね」
被告「はい。会社の社風、知らずに入ってお金をもらっている時点で、知らないということに関してどうなのかなと思うところがある」
被害者代理人「秋葉原の(無差別殺傷)事件。(加藤智大元死刑囚に)類似した点があって、共感を覚えたと。同じような境遇でも日々過ごしておられる方、そういう方への共感はなかったのか」
被告「同じような境遇でも我慢して過ごしている方への共感ということでよろしいですね? むしろ我慢があったから共感を覚えることがあったのだと思う」
被害者代理人「(被告が平成24年に起こした)コンビニ強盗の前に自殺を考えた。(被告が記したネットの)書き込みの『蒸発』とは」
被告「人間関係を全部切り、別のところで一からやり直す」
被害者代理人「今回の犯行の選択肢にはなかった」
被告「さっさと死んでくれということか」
被害者代理人「あなたの中でそういう気持ちがありましたか」
被告「あったからそう書いている」
被害者代理人「(蒸発せず)犯行に及んだということは、京アニへの思いの方が上回った」
被告「自分の中では最悪の事態を防ごうとする努力はしたと思っている」
別の被害者代理人「小説を京アニに送り、京アニ大賞を取ることができると考えたのはなぜか」
被告「(2ちゃんねるの掲示板で)トップ編集者らしき人から『すげえものを見た』と反応があり、賞金をどう使うか聞かれたから、通ると思った」
被害者代理人「作品のレベルが達していないとは思わなかった」
被告「そうなります」
被害者代理人「小説投稿サイトで誰も読んでくれなかったときの思いは」
被告「レベルが高いかどうかで見てもらえるかが決まるのではなく、サイトにファンがいて、その人たちと仲良くなればPV(閲覧回数)が増えるので、ちゃんとしたレベルのものを作る(かどうか)ということではない」
被害者代理人「秋葉原の加藤被告(元死刑囚)は犯罪史に名前が残っている。自分も放火殺人をすることで名を残そうとした」
被告「そういうことは考えなかった。ひどい家庭環境で育ってきた。そういう部分で共感を寄せた」
被害者姉「(被告が恋愛感情を寄せていた)女性監督以外の他の社員はライトノベルで言う『モブ』(群衆)に近かったということか」
被告「モブという認識ではないが、そういう感じと言わざるを得ない」
被害者父「あなたは2ちゃんねるを使いこなしているが、2ちゃんねるになりすましが多いことはご存じか」
被告「昔やっていました」
被害者父「(掲示板のやり取りで)女性監督(本人が書き込んでいる)と確信したと言っていたが、ひっかけられている(なりすまし)と思ったことは」
被告「2ちゃんの用語で『あおる』、つまり『あなた本人ですよね』という書き込みをすると(本人の場合)恥ずかしさから流す態度を取る。(あおりに対してそのような態度だったので)女性監督で間違いない」
《被害者参加した遺族や代理人からの質問が終わり、最後に弁護人から「(昨晩)寝られたか」と聞かれた青葉被告。「寝ておりません」と答え、「疲れた」と繰り返した。次回公判でも被告人質問が行われる》

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