なぜこんな所に?中央分離帯にバナナ 市に聞くと意外な答え

「街路樹のバナナに花と実がなっている」。街路樹と言っても、台湾や沖縄のことではない。九州でも北に位置する福岡県久留米市の路上だという。9月下旬、毎日新聞久留米支局に情報提供があり、現場を訪ねた。
現場は、久留米市役所に近い市道。中央分離帯の一角に、南国風の大きな葉を付けた高さ2メートルを超える木が植わっていた。近づいて見上げると、赤紫の花の上に青々とした実の房がなっている。
今年の夏(6~8月)、全国の平均気温は気象庁が統計を取り始めた1898年から最高となり、最も暑かった。「地球温暖化の影響が、ここにも来たか」。そう思いながら写真を撮り、熱帯果樹に詳しい前田隆昭・南九州大教授に問い合わせた。
すると、前田さんは「これは間違いなくバナナ」と教えてくれた。国内の露地でバナナが栽培される北限は鹿児島県の九州本土より南にある離島辺りまでと言われていて、九州北部で育つのは珍しいという。
というのも、バナナの株は冬に枯れてしまうためだ。このバナナが実を付けたのは「夏の暑さのせいではなく、冬の気温が高くなって、根が生き残っていたからではないか」と指摘する。
気象庁のデータを見ると、確かに昨年12月の平均気温こそ平年を1・3度下回ったが、11月と今年1、2月は0・3~2・4度上回っていた。
それにしてもなぜ、バナナが市道に植わっているのか。久留米市に問い合わせたところ、意外な答えが返ってきた。
「市の許可を取らずに、ある個人が植えたのです」。
確かに、この一角以外には、ケヤキが並んでいる。バナナの葉が茂って車の通行の妨げになって危険として、市は植えた人に伐採を求めている。
こうした経過を情報提供者の男性に報告すると、男性は「市の主張は理解できるが、バナナは珍しいものだから残してほしいよね」と話していた。【足立旬子】

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