北海道医療大、全学部と大学病院を「存続かけて移転」…当別町に事前説明なし「条件闘争になるので」

北広島市に移転

北海道医療大が北海道当別町から北広島市へ移転する計画を巡り、運営法人「東日本学園」の鈴木英二理事長は28日、町役場で後藤正洋町長に移転方針を伝えた。後藤町長は「残念な思いはあるが、プラス思考で協議する場を作ってほしい」と要請し、両者は移転に向けた協議の場を設けることで合意した。
面会には町商工会や当別青年会議所などの関係者も同席し、報道陣にも公開された。鈴木理事長は、27日の理事会で2028年4月にプロ野球・北海道日本ハムファイターズの本拠地球場を核とする複合施設「北海道ボールパークFビレッジ」の敷地内に移転する方針を決めたと説明した。
理由については、少子化による学生数の減少が懸念されることや、札幌市からの通学時間が短縮される点を挙げ、「決断しなくてはならない時だった。学校の存続をかけて決めた」と理解を求めた。
これに対し、町側は移転方針決定まで大学側から説明がなかったと指摘。後藤町長は「今まで積み重ねてきた信頼関係を損なわないでほしい」と求めた。その上で、関係団体からは跡地利用について意見が出され、大学側は、売却する場合は事前に町に知らせることを約束した。
面会後、鈴木理事長は報道陣の取材に応じ、移転計画の概要を説明。〈1〉全学部に加え、町内の歯科クリニックと札幌市北区の大学病院も北広島市に移転〈2〉移転先はJR北海道が計画する新駅近くで、現在駐車場として使われている土地(約1万7700平方メートル)〈3〉整備費用は約420億円――とした。当別町のキャンパスには、薬草を研究する薬用植物園とグラウンドなどを残すという。
町への説明がなかった点については、「事前に伝えれば条件闘争になる。それは避けたかった」と釈明した。
一方、後藤町長は「経済的打撃は大きいが、希望をなくしているわけではない。新たなまちづくりに挑戦したい」と前向きに語った。

移転方針に現役学生の受け止め方は分かれた。母親も同大出身という心理科学部3年の学生は「卒業してすぐに母校が当別からなくなるのは寂しい。町もにぎわいがなくなってしまうのでは」と心配そうに語った。一方、薬学部3年の学生は「今のキャンパスに通う路線は雪で止まってしまうことが多く、試験の振り替えもあって大変だった。北広島への移転で通学は便利になるのでは」と話した。
北広島市の不動産会社「歓迎」、医療系学部持つ近隣大「心配」

道医療大の移転方針に、受け入れ先となる北広島市からは様々な声が上がった。
上野正三市長は28日の定例記者会見で、近く運営法人の鈴木英二理事長が説明に来ると明かした上で、対応については「どれだけの規模での移転なのかわからず(大学への支援策など)軽々に答えられない」と述べた。
市内で不動産会社を営む男性は、札幌市に近いことから大幅な人口増加は期待できないとしつつ、「多くの学生が来ればまちににぎわいが生まれる。新しい店舗も増えるはずでプラスは多い」と歓迎した。
北広島や恵庭、千歳市には看護、医療、リハビリなどの学部・学科を持つ3大学が立地することになり、関係者の思いは複雑だ。
恵庭市の北海道文教大は看護学科とリハビリテーション学科で看護職と理学療法士や作業療法士を育成。同大企画調整部は「影響がないわけではないが、互いにできるところは連携し、 切磋琢磨 しながら大学運営を続けていきたい」としている。千歳市の北海道千歳リハビリテーション大の担当者は「道医療大は医療系大学として実績がある。千歳周辺からも優秀な学生が集まる可能性があり心配だ」と話した。

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