「清く正しく美しく」。宝塚音楽学校の校訓を体現したような人物と近所で評判だった25歳の娘役のタカラジェンヌが、自宅のある18階建てのマンション最上階から身を投げ、死亡した。半年前には劇団内でのイジメ報道もあったことで憶測が飛び交うが、真相はわからない。
Aさんは宝塚の『清く正しく美しく』を体現したような人
9月30日午前7時ごろ、兵庫県宝塚市湯本町のマンション敷地内に女性が倒れているのを住民が発見して110番通報、救急隊員らが駆けつけたが女性は既に死亡していた。最上階の18階で女性のカバンが見つかり、争った形跡などもないことから宝塚署は女性が飛び降り自殺を図った可能性が高いとみている。
Aさんが転落死したマンション(撮影/集英社オンライン)
女性は宝塚歌劇団宙組所属の俳優Aさん(25)で、出演予定だった10月1日から宝塚大劇場で上演の宙組のミュージカル「PAGADO(パガド)」「Sky Fantasy!」は8日までの休演が決まった。同歌劇団は公式ホームページで「この度の歌劇団生徒の急逝につきまして、心より哀悼の意を表するとともに、お客様にはご心配をおかけしておりますこと、深くお詫び申し上げます。歌劇団といたしましては、生徒の体調も含めた安全を第一に考え、それらを確認したうえで今後の対応を考えていきたいと思っています。そのため、専門家にも入っていただき、一人ひとりの心のケアなどにも時間をかけ、生徒の心情に寄り添ってまいります」とコメント。東京宝塚劇場で開催予定だった花組公演「鴛鴦歌合戦」「GRAND MIRAGE!」も「出演者の心身の状況を考慮した結果」として5日まで中止とした。死亡した女性と同じマンションに住む60代の女性も神妙な表情だった。「主人が何度かロビーですれ違ったことがあったらしく、『こんにちは』と丁寧に挨拶してくれる礼儀正しい人だと言ってました。ここは6年前に建てられた新しいマンションなので若いファミリー層も多く、こちらが挨拶しても無視されることも少なくありません。そんな中でも、Aさんはフロアも違う見ず知らずの住人にも丁寧に接してくれて、『心の優しい素敵な方だな』と思っていました。今回の件もあり、数ヶ月前に出た『イジメ報道』も読んだのですが、Aさんは宝塚の校訓でもある『清く正しく美しく』を体現したような人だったので、実はすごく悩まれていたのかなと思ってしまいます」Aさんを巡っては、一部メディアが娘役の先輩に「前髪の作り方を教えてあげる」と高温のヘアアイロンを額に押し付けられてやけどを負うなどのイジメ被害者だったと報道。それに対し同歌劇団は同日中に「弊団は、当該報道の内容が全くの事実無根であることを当事者全員から確認しており、当該週刊誌に対しても、これまで同様、事前に送られてきた質問状へその旨を回答したうえで、事実と異なる記事掲載を止めるよう強く要望してまいりました」と公式発表するなどの経緯があっただけに、ファンや周辺住民も気を揉んでいたのだろう。
ウチの奥さんが出くわす度に「孫が宝塚におるんや」とうれしそうに話していた
近くに住む50代の女性にとっても、決して他人事ではないようだ。「生まれも育ちも『宝塚』の私にとって『タカラジェンヌ』は身近な存在でしたから、本当に残念でなりません。この8月にも宝塚市民を対象にした『貸切公演』にも行ってきたばかりだし、街を歩いても、いかにも宝塚の女優さんという人たちとすれ違うこともあるので、彼女たちは宝塚市のシンボル的存在なんです。しかも最近では、カルチャースクールで、“おばちゃん合唱団”の指導に来てくれたり、アクセサリーショップや中華料理店をオープンした宝塚のOGの方もいます。今回の件で『元・宝塚ならどうとでも生きていけるのに…』と嘆いている友人もいましたよ」
公園が中止された「PAGADO(パガド)」のポスター(facebookより)
Aさんと同じマンションに住む30代の女性も心を痛めていた。「このマンションを『宝塚の聖地』と呼ぶ人もいるようですね。たしかにタカラジェンヌっぽい人は多くて、私が知る限りでも10人近くは住んでいます。マンションが建つ以前は駐車場だったし、18階建てというのもあって『街の景観を損ねるのでは?』と心配する近隣住民への説明会も開いたようですね。実際に、廊下側からは宝塚大劇場が見渡せるし、今回亡くなった方も廊下側の駐車場で見つかったみたいですね。どんな気持ちで飛び降りたのかと思うと、胸が痛みます」Aさんの実家は、京都市内の老舗漬物店。本店の近くの居酒屋の女性従業員はこう語る。「先代の社長だったあそこの会長さんは町内会の会長も務めていて、毎年5月のお祭りや8月の地蔵盆、10月の運動会などのイベントを取り仕切っていました。7年くらい前に町内会の行事のあとの直会で、『孫が宝塚に入ったんや~』とうれしそうに話していました。あそこは老舗の漬物屋さんですから、近所の方たちも『さすが○○さんのお孫さんや~』と喜んでいたので、こんなことになってしまい残念です」近くの住民もこう肩を落とした。「先代の社長は町をよく散歩していたんだけど、ウチの奥さんが出くわす度に『孫が宝塚におるんや』とうれしそうに話していたらしいから、親族にしてみたら本当に無念でしかないよね」
幕開き前に木場健之理事長が「哀悼の意を表します」
Aさんは2015年4月に宝塚音楽学校に入学、2017年3月に宝塚歌劇団に入団した103期生の娘役。同期には、雪組トップ娘役の夢白あやさんらがいる。登記簿情報によると父親はAさんが入団した2017年10月、現場となったマンションの上層階を購入している。Aさんが亡くなった翌日の10月1日には、大劇場に併設された宝塚バウホールで「宝塚舞踊会」が開催された。これは2年に一度、宝塚の専科(特定の組に所属しないスペシャリスト)や中堅、若手が出演する日本舞踊の発表会で、コロナの影響で4年ぶりに開催された今回は、幕開き前に木場健之理事長が「哀悼の意を表します」と異例の挨拶を行った。宝塚大劇場をのぞむ18階の最上階から転落したAさんは最期に何を考えたのだろうかー。
宝塚大歌劇場(撮影/集英社オンライン)
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