繰り返される、高齢ドライバーによる暴走事故。一度事故を起こした車が再び急加速し、そのまま別の事故を起こすことも少なくない。
こうした再加速後の2度目の事故は、なぜ起きてしまうのか。追跡取材すると、高齢ドライバーに多くなるという“ある状態”が見えてきた。
前の車に追突、直後に街路樹へ突っ込む
9月30日、兵庫・川西市で撮影されたドライブレコーダー映像。
前方の水色の車が対向車線を大きく外れ、街路樹にぶつかる様子が確認できる。
この車からゆっくりと降りてきたのは90代の男性。ケガはなかったが、その足取りはかなりゆっくりとしたもので、一歩ずつ確認しながら歩いていることがうかがえる。
周辺の防犯カメラには、この事故直前の様子が映っていた。
右折レーンに停車していた1台の白い車に続いて、先ほどの水色の車がやって来た。水色の車に追突された勢いで、白い車は停止線から押し出された。
このような事故後に加速し、再び周囲にぶつかった事故は他にも起きていた。
制止の声を無視して…現場に残るタイヤ痕
9月19日には、埼玉・所沢市の路上で高齢ドライバーの運転する車が暴走。何度も衝突を繰り返し、ナンバープレートが外れるなど車体はボロボロになった。
通行人が「足どかして!足どかして、だめ!」と呼びかけたが、車は制止を無視して急なバックで建物の柱にぶつかり、急発進して路上に戻っていったという。
一向に車から降りようとせず、再び発進しようとする高齢ドライバーに対し、駆けつけた救急隊が「降りろよ!」と必死に止める場面もあった。
事故から約2週間、改めて現場を訪れると道路にタイヤの痕が残されていて、ここで急加速し、ガードレールに突っ込んでいたことがうかがえる。
取材班は車を運転していた男性を訪ねた。「先日の事故について、お話をお伺いしてもよろしいでしょうか」と玄関先で呼びかけたが、直前まで人影があったものの返事はなかった。
なぜ事故後に再び加速し、2度目の事故を起こしてしまうのか?専門家は、“高齢ドライバー特有の傾向”があるという。
臨床心理士・明星大学心理学部 藤井靖教授: 心理学では「導引理論」と言いますが、感情の統制が加齢とともに難しくなり、1回事故を起こして不安や緊張を感じた時に、一番多く取っている行動をまたとってしまう。
事故でパニックになると、車に乗っている時に一番多くとる「アクセルを踏む」という行動をとってしまい、再び加速し事故が繰り返されるという。 (「イット!」10月5日放送より)