ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)を用いて人工心筋組織を作製し、肥大型心筋症の症状を再現することができたと、京都大iPS細胞研究所などのグループが発表した。肥大型心筋症は根本的な治療法が確立されておらず、作製した人工心筋組織を基に治療法の研究と開発が期待できるという。6日に米科学誌「ステムセル・リポーツ」に掲載された。
肥大型心筋症は遺伝子変異が原因で500人に1人の割合で起きるとされる。心臓の壁が厚くなり、全身に血液を送りにくくなる。吉田善紀准教授らのグループは21年に、iPS細胞を用いた心筋細胞の構造や代謝機能を成熟させることに成功しており、今回はその技術を使って、同心筋症の疾患モデルを作製することに取り組んだ。
同心筋症の原因とされる遺伝子変異を導入したiPS細胞を作製。そこに成熟を促す作動薬と伸長刺激を与えたところ、立体的で成熟した人工心筋組織を作ることに成功した。同心筋症で起こる心筋細胞の肥大化や過収縮を示したという。
吉田准教授は「肥大型心筋症はマウス実験で発症機序を解明することが難しい。iPS細胞による疾患モデルを基にデータを集め、肥大の進行を抑える薬の開発など、治療法の確立につなげたい」と話している。