トマトでも皇室献上詐欺…生産者から「先生」と呼ばれた“献上品ジイさん”の意外な評判

「献上品ジイさん」は桃だけでなく、トマト農家にもウソの献上話を持ちかけていた。
「皇室に献上できるかもしれない」
今年7月、こう言って福島県の農家から桃をダマし取ろうとした詐欺未遂容疑で逮捕された農業園芸コンサルタントの加藤正夫容疑者(75)。茨城県のトマト農家からも献上品名目でトマトを詐取したとして、4日、県警捜査2課に詐欺の疑いで逮捕された。
今年3月、加藤容疑者は皇室への献上品の選定者を装い、同県結城市の農家の50代男性に「あなたが作るトマトを検査したい。成分検査だけでもやっておいた方がいい」ともっともらしいことを言って、トマト2箱と3袋(計1万2000円相当)を「献上」させた。
「被疑者の肩書に疑問を感じたトマト農家が警察署に相談し、詐欺と判明。裏付け捜査を進め、福島県警から身柄を移し、逮捕した。動機については語っていない」(捜査関係者)
加藤容疑者は2020年ごろから桃の生産が盛んな福島市飯坂町を訪れ、「樹木園芸研究所所長」の名刺を差し出し、「東大大学院農学部の客員教授として農業指導を行っている」とかたり、献上を依頼していた。献上した桃農家には「皇室献上桃生産地」と書かれた木札を送り、「美智子さまからのお礼」と言って上皇后が作ったとされる大福餅を配っていた。これには桃農家たちも大喜び。加藤容疑者は皆から感謝されていた。
■金銭の要求は一切なし
加藤容疑者は同様の手口で全国の米や果物、野菜農家、加工品の生産者らを訪問。農業の知識は豊富だったようで、行く先々で「先生」と呼ばれ、信頼されていた。
5年ほど前から加藤容疑者と付き合いがある茨城県内の別のトマト農家に話を聞いた。
「桃農家のケースと同様、農業資材販売会社の社長と一緒にこの辺りの農家を回っていました。『成分検査をさせて欲しい』と言われたのでトマトを渡しましたが、金銭の要求は一切なく、『宮内庁からです』と言われ、お返しのクッキーをもらいました。道の駅で見かけるようなものでしたが、宮内庁からとはいえ、税金なので、こんなものかなと思っていました」
加藤容疑者の正体は元農協組合員。先祖代々農業を営み、東京都練馬区大泉学園前に土地1000平方メートルを所有している。
「農業というのは肥料や農薬など、資材にお金がかかります。『この肥料の大本はコレだから、同じ成分が含まれた別の肥料を使えば、コストが抑えられるよ』とアドバイスをもらったり、加藤先生の指示通りにやって品質が改善したこともありました。どんな質問をしても迷いがなく、適切な答えが返ってきます。
アップルパイやたくさんの花の苗をお土産に持ってきてくれたり、気遣いのできるとてもいい方でした。どこかに農業に対するコンプレックスがあったのか、それとも『先生』と呼ばれることに優越感を覚えていたのか……。事件を知って驚きました。悲しいというか、残念で仕方ありません」(前出の農家)
そこまでして全国の生産者からチヤホヤされたかったのか。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする